竜王戦

第28期竜王戦七番勝負第1局

10月15日(木)から第28期竜王戦七番勝負が開幕します。
糸谷哲郎竜王に挑戦するのは、渡辺明棋王です。

では、挑戦者決定戦第3局を振り返りましょう。

第3局は改めて振り駒が行われ、渡辺棋王の先手となりました。
戦型は角換わり。よくある手順とは違いますが、これもある指し方です。
先手から角を換えると、▲7七角~▲2二角成と2手損しますが、後手も2二金の形では戦えないためいずれ△3二金と戻すことになり、手の損得はなくなります。
ただ、△2二金の形は棒銀に強いため、先手のそれを警戒した意味合いがあります。
永瀬六段は▲4七銀と棒銀が消えたところで△3二金と戻しています。

 

序盤の駆け引きはありましたが、角換わり腰掛け銀のよくある形に合流しました。
木村定跡などは後手の桂頭を狙いつつ攻めをつなぐ組み立てですが、渡辺棋王は△7三桂がない形で仕掛けていきました。
前例はご自身が順位戦で指されており、その時の局後に「一見細いんですけどやると大変なんですよね」と、おっしゃっていたそうです。

 

細い攻めをつなげさせたら棋界随一、と言っても過言ではない渡辺棋王の攻め。
前例の順位戦の将棋も、銀桂損の局面もありながら、見事攻め切りました。
本局も角銀交換と駒損ながら、飛車の成り込みはほぼ確定です。
というのは、ここで△5二金と飛車を成らせない手もありますが、▲4七金~▲3六金と角を捕まえに行く手段があり、どうやら後手としても飛成を甘受する方が良いといいます。

 

△3九飛の反撃に対して、腰掛け銀を▲6七銀と引き、自陣をしっかりさせた渡辺棋王。
控室でも「堅い」という声が上がったそうです。
以前、永瀬六段の講座で、腰掛け銀が「遊び駒」という局面を解説されていたことを思い出しました。
そういえば、玉が堅いのも渡辺棋王の特徴でしたね。

 

永瀬六段は自陣の飛車を活用し、二枚飛車の攻めを見せようと画策しています。
そこで▲2五歩と玉頭から行ったのが、なるほど、と思った手。
と、思いきや、ここは単に▲2八馬と引いた方が良かったそうです。
簡単にいうと、歩切れの相手に歩を渡しているのが大きいのです。
単に▲2八馬だと△3五飛成を心配していた、渡辺棋王。
「飛車を過大評価していたのかもしれない」という感想もあり、飛車が大好きな棋王らしい考え方ですね。

 
難しい将棋ながら結果的には快勝譜となり、渡辺棋王が竜王戦の挑戦者に名乗りをあげました。 

両者の対戦成績は、
糸谷竜王 2勝
渡辺棋王 4勝
と、なっています。
NHK杯での勝ちっぷりが印象的ですが、対戦成績は渡辺棋王が押しています。
直近では王将リーグで糸谷竜王が勝っています。

両者居飛車党ですので、相居飛車が主戦場となりそうです。
渡辺棋王は角換わりを受けて立つことが多いので、糸谷竜王が避けなければ角換わりシリーズになる予感がします。

第28期竜王戦七番勝負第1局
糸谷哲郎(いとだに・てつろう)竜王 対 渡辺明(わたなべ・あきら)棋王
2015年10月15・16日(木・金)
9:00~
<宇奈月国際ホテル>富山県黒部市宇奈月温泉7-26
立会:大内延介(おおうち・のぶゆき)九段
解説:藤井猛(ふじい・たけし)九段

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第28期竜王戦 七番勝負 第1局初日 糸谷哲郎竜王 vs 渡辺明棋王
解説:塚田泰明(つかだ・やすあき)九段
聞き手:塚田恵梨花(つかだ・えりか)女流2級

第28期竜王戦 七番勝負 第1局2日目 糸谷哲郎竜王 vs 渡辺明棋王
解説:広瀬章人(ひろせ・あきひと)八段
聞き手:藤田綾(ふじた・あや)女流初段

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