7月28日(金)に第65期王座戦の挑戦者決定戦が行われました。
決定戦に進出したのは中村太地六段と青嶋未来五段です。
中村六段が勝てば61期以来の王座挑戦、青嶋五段が勝てば初挑戦となります。
では、挑戦者決定戦を振り返りましょう。
振り駒の結果、青嶋五段の先手番となりました。
出だしは矢倉模様に見えましたが、青嶋五段の四間飛車穴熊になりました。
振り飛車穴熊に対しては持久戦が主流で、銀冠もありますが中村六段は穴熊を選択しました。
定跡形は△3一金△3二金型ですが、本局は△3二金△4三金型と工夫されています。
この違いがどうでるかに注目ですね。
△7二飛と寄って角頭を狙った中村六段。この瞬間が「怖かったですが」という感想が残っています。
このまま△7五歩から歩交換ができれば後手が作戦勝ちになるため先手は受けたいのですが、▲6六角と受けると△8二飛と千日手を狙われてしまいます。
ゆえに先手は動いていくことになり、実戦も▲4五歩から仕掛けていきました。
前図から角交換をして、▲6四歩と突き捨てを入れました。
これは▲4五飛と走った時に8五への道を開けた意味もあり、実戦もその筋を防ぐ展開となりました。
感想戦ではこの突き捨てを入れずに単に▲4五飛と走る手も検討され、こちらは▲4六角の筋を中心に攻めを組み立てる構想です。
優劣は難しいところです。
突き捨ての効果で▲8五飛を見せた青嶋五段。それを受けた△8二飛に▲7一角とさらに追撃をします。
ここがポイントの局面で、感想戦では▲6三歩と垂らす手も検討されました。これには△5五歩が中村六段の予定で、△8八角の筋で攻めようという狙いです。
ところが、うちのソフトによると▲6三歩△5五歩には▲5三角成を指摘していて、それで先手が少し指しやすいといいます。
飛車の横利きが止まっているので△同金しかなく、▲4二飛成が実現する仕組みです。
実戦は図で▲5三角成△同飛で攻めにくかったので、ソフトの指摘も一理ありますね。
「このあたりはダメだと思っていました」という青嶋五段の感想があるように、後手が良い終盤戦です。
▲7二銀で後手の桂香が取れるので駒得にはなりますが、持ち駒の銀を手放したことと、5八金、5六銀、8九桂の働きが弱く、先手が芳しくありません。
代案も難しいところですが、盤上の駒を活用する▲4五銀辺りが候補になりそうです。
以下、中村六段が41分の長考から斬り合いを臨み、最後は△1七桂というおしゃれな捨て駒で一局を決めました。
中村六段はこれでタイトル戦に3度目の登場、王座戦は2度目となります。
第61期では途中2勝1敗とリードし、フルセットまで戦い抜いていますので、今期こそはと心中期するものがあることでしょう。
今期の王座戦も楽しみですね。
五番勝負の日程は下記の通りです。
第1局 9月5日(火) 宮城県仙台市「仙台ロイヤルパークホテル」
第2局 9月19日(火) 大阪府大阪市「ウェスティンホテル大阪」
第3局 10月3日(火) 新潟県南魚沼市「龍言」
第4局 10月11日(水) 神奈川県横浜市「横浜ロイヤルパークホテル」
第5局 10月17日(火) 山梨県甲府市「常磐ホテル」
棋譜中継はこちら
王座戦中継サイト