王座戦

第64期王座戦五番勝負第3局

羽生善治王座に糸谷哲郎八段が挑戦している第64期王座戦五番勝負。
第2局は170手で羽生王座の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2連勝とし、防衛に王手です。

では、第2局を振り返りましょう。

第64期王座戦五番勝負第2局-1

第2局は糸谷八段の先手番です。居飛車を目指す出だしの糸谷八段に対して、羽生王座は△4四歩と角道を止めました。そして、四間飛車へ。羽生王座は直近のJT杯でもゴキゲン中飛車を採用しており、振り飛車の採用が見られるようになりました。藤井システムに対して▲5五角は昔からある手法で、△6三金と受けると側面が弱くなるため▲3五歩からの仕掛けが成立します。△6三銀と受けて駒組みが進みます。

 

第64期王座戦五番勝負第2局-2

先手の角が▲5五角~▲3七角と6四の歩を狙っているので、後手は離れ駒のある陣形を強要されています。通常であれば▲3七角という符号は3手で実現できるものですが、本譜は2手なので手得しているところも見逃せません。動きを見せた羽生王座に対して、▲2八飛が控室も驚きの声が上がった好手段。羽生王座も「うまい手順でした」と感想戦でおっしゃっています。本譜のように▲5九角~▲1七桂と活用して先手の駒が働いてきました。

 

第64期王座戦五番勝負第2局-3

先手は角を5九から7七へ転換し、垂れ歩と連動して「と金」を作りました。自然な順に見えましたが、△6四角~△3七歩成で千日手の順がちらつきます。本譜は糸谷八段が千日手を回避しましたが、その後の形勢は後手指しやすくなりました。それを踏まえて、▲3三歩成に変えて▲2二歩のほうが良かったそうで、こちらの変化のほうが後手の飛車を押さえこむことができるのがその理由です。成れる歩を成らずに持ち駒の歩を使うのは、少々例外気味に感じてしまいます。

 

第64期王座戦五番勝負第2局-4

第1局では羽生王座が銀損という局面がありましたが、本局は銀損から角損の局面が現れました。しかし、形勢は「本当に悪かった(糸谷八段)」とのこと。つまり後手のほうが良いことになります。駒の損得は先手角得、玉形も先手の方が堅いにも関わらず、駒の働きに大きな差がついています。後手には△5九歩成や△1七歩成と駒損を取り返す確実な手段があるのに対して、先手は歩切れということもあり手番を握っても有効な手段が難しいのでしょう。

 

第64期王座戦五番勝負第2局-5

後手の飛車は4二~3二~2二と小刻みに動いた後、1五~5五と大きく動いて攻防の要所を占めています。△5八とを気にした糸谷八段は▲5六歩と打ち、飛車の利きを止めてから▲6一金と攻めを継続しました。そしてその後、▲5五歩と突き捨てる手順が出ています。それなら図で▲5六歩を打たずに単に▲6一金なら?という疑問が出るのも自然な発想で、以下△5八との攻め合いもはっきり後手勝ちというわけでもなかったことが感想戦で判明しました。「一歩千金か」と天を仰いだ糸谷八段。将棋の奥深さを感じた一幕でした。

 
次局は羽生王座の先手番です。
振り飛車が飛び出し戦型予想はますます難解を極めますが、先手番なら羽生王座は居飛車で行くと思われます。
糸谷八段次第ですが、一手損角換わりか横歩取りと予想します。
 
 
第64期王座戦五番勝負第3局
羽生善治(はぶ・よしはる)王座 対 糸谷哲郎(いとだに・てつろう)八段
2016年10月4日(火)
<葉山館>山形県上山市葉山5-10
立会:大内延介(おおうち・のぶゆき)九段
新聞解説:飯塚祐紀(いいづか・ひろき)七段

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