羽生善治王位に菅井竜也七段が挑戦している第58期王位戦七番勝負。
第3局は137手で羽生王位の勝ちとなりました。
シリーズ成績を1勝2敗とし、ひとつ返しました。
では、第3局を振り返りましょう。
第3局は羽生王位の先手番です。居飛車を目指す羽生王位に対して、菅井七段は第1局と同じく三間飛車を採用しました。
第1局を踏まえ、羽生王位は右辺を▲3八銀型で備え、左辺の整備を急ぎました。
よくある▲4八銀型だと△2五桂ポンと呼ばれる手法で飛車先を逆襲された時に受けづらいという意味があります。
そして、本局も自陣角で攻めの糸口を探ります。
桂頭に飛び出した▲3四角は意外と追われにくい位置です。
その角の位置と手持ちの一歩を活かして、1筋を攻めた羽生王位。対振り飛車で玉と反対側の端を攻めるのは珍しいですね。
過去に女流タイトル戦でこの攻め筋が出現しています。
菅井七段はこの攻めに対する受けがないとみて、△8五桂から攻め合いに出ました。
1筋対9筋。どちらの端攻めが効果的かがポイントです。
9筋の攻めをていねいに受け、歩得になった羽生王位。後手が歩切れになったことも見逃せないポイントです。
先手から攻めるなら▲2四歩と飛車を活用したいところですが、歩を渡すので後の△7四角がきになるとのこと。
そこで▲9四歩と突き出したのが羽生王位らしい手渡しでした。この手に対し「突かれて困った」という菅井七段。
本譜は△8三銀と端を補強しましたが、続く▲7七歩が自陣のキズを消しながら相手に歩を渡さないというテーマに沿った一手。
高度な技が次々と出てきます。
本局の感想戦で個人的に気になったのは、羽生王位の「本当は○○したかった」というフレーズ。
この▲2三歩では「本当は成りたかった」と▲9三歩成が読みの本線。9筋で香車を調達し、▲2三香と打てば駒得になるからです。
しかし、その先の展開を考えると後手の駒をさばかせていることになると羽生王位は判断したということになります。
この後、77手目▲1六角でも「本当は(2三の歩を)成っていきたい」という感想が残っているように、この辺り、羽生王位はだいぶ読みの修正を強いられていたようです。
わずかな得を積み重ね続け、いつの間にか先手優勢になっている終盤戦です。
9七にと金を作って食い下がる菅井七段の攻めに、▲7九玉とかわしたのが「玉の早逃げ、8手の得」を地で行く好手。
先手は2四の飛車が狭く、▲8九玉型では飛車を渡すと詰んでしまいます。ひとつ早逃げをしておけば飛車を渡せる格好となり、強く攻め合うこともできるようになりました。
実戦も▲2二飛成と飛車を切り、一気に寄せ切ってしまいました。最後の詰み筋は詰将棋にもでそうな筋でぜひ並べて鑑賞していただきたい手順です。
「(序盤の)△3三桂と跳ねるところでもう少し考えないといけなかった」という菅井七段の感想があり、次局以降その対応策が見られるのではないでしょうか。
羽生王位の更なる研究も見られるかもしれません。
ここまで三間飛車シリーズとなっていますので、戦型予想は次局も菅井七段の三間飛車としておきます。
第58期王位戦七番勝負第4局
羽生善治(はぶ・よしはる)王位 対 菅井竜也(すがい・たつや)七段
2017年8月22・23日(火・水)
<ウェスティンホテル淡路>兵庫県淡路市夢舞台2番地
立会:森けい二(もり・けいじ)九段
副立会:西川慶二(にしかわ・けいじ)七段
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※第4局は現地イベントがありません
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