糸谷哲郎竜王に渡辺明棋王が挑戦している第28期竜王戦七番勝負。
第4局は98手で渡辺棋王が勝ちました。
シリーズ成績を3勝1敗とし、渡辺棋王が竜王復位まであと1勝としました。
では、第4局を振り返りましょう。
第4局は糸谷竜王の先手です。
出だしは角換わり模様でしたが、6手目に△9四歩と突いた渡辺棋王。
それを見た糸谷竜王が52分の長考に沈み、▲5六歩を指しました。
定跡形から外れ、力戦調に。
とても面白い展開が期待でそうです。
先手は中飛車に振り、玉を美濃囲いにしました。厳密には▲2六歩が突いてあるので、ちょんまげ美濃ですね。
対する渡辺棋王は、玉の堅さを重視する棋風通り、対ひねり飛車で見られる玉の囲い方をしました。
なかなか珍しい組み合わせです。
この組み合わせがどう出るかが今後の焦点になります。
先手は▲2六歩と突いてある形を生かして銀冠に組みたい、後手はそれを許したくない、という思惑があり、▲1六歩を受けずに渡辺棋王は△6五歩と仕掛けました。
糸谷竜王は反発して▲7五歩と突きましたが、控室にいた真田七段は「やぶへびになることも多い」という旨のコメントをされていました。
うちのソフトはこれが敗着とまで示しており、話半分にしても▲7五歩は良くなかった可能性があります。
確かにこの後△7五歩から△7六歩の突き出しを見せられて、先手はゆっくりしているわけにはいかなくなりました。
△8六歩も手抜いて中央から駒損覚悟でさばきに行った糸谷竜王。
そこで、取れる角を取らずに△4二銀打としたのが気づきにくい手でした。
先手はどの駒を動かしてもイマイチで、チェスのツークツワンクを連想させます。
ニコニコ生放送で解説の森下九段も指摘した視聴者に「強い」と感嘆の声をあげていました。
この△4五角で「▲2六歩をようやくとがめたかな」という旨の感想を残している渡辺棋王。
飛金取りもさることながら、ちょんまげ美濃のぽっかり空いた2七のマス目に利いていることが大きいのです。
通常であれば美濃囲いに対して飛車は1段目に成るのがセオリーです。
本譜は△8八飛成と2段目に成った手が、△2七銀の打ち込みを見せて2手スキになっています。
序盤の▲2六歩がなければこの手はなかったわけで、歩一枚の位置の違いが勝敗に直結したと言っても過言ではないでしょう。
ブログに書かれていたように「相手陣を攻める手を読」んで攻め倒した渡辺棋王。
次局は先手番です。
おそらく後手の糸谷竜王が戦型に関して注文をつけると思われますので、2手目△3四歩から1手損角換わりか横歩取りと予想します。
第28期竜王戦七番勝負第5局
糸谷哲郎(いとだに・てつろう)竜王 対 渡辺明(わたなべ・あきら)棋王
2015年12月2・3日(水・木)
9:00~
<常磐ホテル>山梨県甲府市湯村2-5-21
立会:西村一義(にしむら・かずよし)九段
解説:飯塚祐紀(いいづか・ひろき)七段
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第28期竜王戦 七番勝負 第5局初日 糸谷哲郎竜王 vs 渡辺明棋王
解説:中村修(なかむら・おさむ)九段
聞き手:竹部さゆり(たけべ・さゆり)女流三段
第28期竜王戦 七番勝負 第5局2日目 糸谷哲郎竜王 vs 渡辺明棋王
解説:郷田真隆(ごうだ・まさたか)王将
聞き手:藤田綾(ふじた・あや)女流初段