9月12日(土)に熊本県で行われた、JTプロ公式戦二回戦第三局。
92手で豊島将之七段の勝ちとなりました。
では、第三局を振り返りましょう。
振り駒の結果、羽生名人の先手番となりました。
豊島七段の2手目△8四歩に、▲7八金と珍しい立ち上がりに。
これは「羽生の頭脳」や「変わりゆく現代将棋」に書かれている手法で、公式戦でも毎年数局指されている出だしです。
タイトル戦では昨年の王座戦で後手を持っていた羽生名人。ご自身も2010年の竜王戦で指されています。
著書の「変わりゆく現代将棋」に、「3手目▲7八金は、角換わり腰掛け銀に推移する」という結論を出された通り、その戦型へ。
先後同型に似た形ですが、後手は△9四歩を△2二玉に変え、先手は「後手が突かなければ、そのくらいを取るのが、先手の基本方針だ(羽生の頭脳)」の▲9五歩。この違いがどう出るかですね。
後手から先攻する将棋になりました。
「ここは失敗したなと思っていました」という、豊島七段。
△2四同銀もあるところ(豊島七段)ですが、私見では▲4四歩と取り込んでおき、本譜と同じ攻めをすると、取り方を変えて、▲4三歩成~▲6六角で王手飛車の筋があります。
こうなると△2二玉がたたっているわけで、入城する自然な一手も得ばかりではないのですね。
本譜は△2四同歩でしたが、▲2五歩から手筋の継ぎ歩が厳しい攻めになりました。
角換わり腰掛け銀らしい、激しい攻め合いになりました。
豊島七段は手番を握ろうと銀損覚悟で△2四銀と歩を払いました。
対する羽生名人は、取れる銀を取らずに▲4一銀。△2二玉と入らなければなかった手で、違いが先手にとって有利に働いているような印象を受けます。
ちなみに、先手玉は△8八歩▲同玉と呼び込まれたもの。後手玉は一歩捨てなくても近いので、先のような印象が強くなります。
歩の連打で先手を取ろうとする豊島七段に、落ち着いて▲2八飛と引いた羽生名人。
これが敗着になったといいます。
この後、豊島七段が攻め続け、羽生名人の反撃が届かなかったことを考えると、ここで▲2五同桂のほうが良かったというのも納得ですね。
以下の予想される展開は棋譜コメントにお任せしますが、その手順をソフトに検討させたら、形勢判断は「互角」。
まだまだ難解な将棋が続いていったようです。
角換わり腰掛け銀の激しい攻め合いを制した豊島七段が準決勝進出を決めました。
勝った豊島七段は、準決勝に大阪市で森内九段対深浦九段の勝者と対局になります。
勝者コメントと棋譜はこちらから。
「二回戦第三局 熊本大会」勝者・豊島七段のコメントを掲載!
二回戦第四局は、森内九段と深浦九段の登場です。
どちらかというと受けに定評のあるお二人で、NHK杯の△1二銀と打歩詰めを利用した受けは記憶に新しいところでしょうか。
熱戦になりそうですね。
将棋日本シリーズ 四国大会 JTプロ公式戦 二回戦第四局
森内俊之(もりうち・としゆき)九段 対 深浦康市(ふかうら・こういち)九段
2015年9月26日(土)
15:00 開演予定
サンメッセ香川 大展示場
香川県高松市林町2217-1
解説:谷川浩司(たにがわ・こうじ)九段
聞き手:室谷由紀(むろや・ゆき)女流二段
読み上げ:北尾まどか(きたお・まどか)女流二段
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