郷田真隆王将に久保利明九段が挑戦している第66期王将戦七番勝負。
第4局は100手で郷田王将の勝ちとなりました。
シリーズ成績を1勝3敗とし、まずは1勝を返しました。
では、第4局を振り返りましょう。
第4局は久保九段の先手番です。3手目▲1六歩と振り飛車模様の出だしに対して、郷田王将は△8四歩と居飛車宣言。
久保九段の選択は先手ゴキゲン中飛車でした。ここまでは▲1六歩が入っている以外、第1局と同じ進行になっています。
端歩が入っている分、先手玉の逃げ道を広げているので、これがどう作用するかが注目です。
▲7八銀型は左辺の進展性がないので、早めに動くのがセオリーとされています。
しかし、本局の久保九段は美濃囲いに収めてから仕掛けていきました。その代わり居飛車陣に△5二金右と△4二銀の2手が入っています。
郷田王将は通常の定跡と比べ中央が厚くなっていることを活かし△5五歩と飛車の退路を断ちました。次に△4五角で飛車が取れるところですが、久保九段は▲7七桂。
対して2時間40分の長考で△3三銀と飛車と取りに行かなかった郷田王将。難解な中盤戦です。
先手は▲7一角から馬を作り、後手はその反動を利用して7七の桂頭を攻めます。△7六歩と取り込んだあたりでは「自信がなくてもしょうがない」と郷田王将の感想があります。▲6五歩と切り合いを目指した手に、△7七歩成と踏み込み、さらに△7八と・△6九とと激しい駒の取り合いになりました。
この展開を「どうかなと思った」と久保九段。
郷田王将も「自信があってやっているわけではない」とおっしゃていることから、どうやらこの取り合いは難解のようです。
久保九段は「何かいい手がありそうだとにらんだ」そうで、48分の考慮の上▲5三桂の攻めを選びました。
対する郷田王将は2分で△3一金とかわします。
ここでは△6七馬という手段があったそうで、郷田王将も「どこかでやりたかったが、効果が分からなかった」と振り返っていました。
金取りの瞬間に△6七馬はなかなか浮かびづらい発想で、以下、▲5八歩△4五馬▲4一桂成△3五金と進み、「何ともいえない(郷田王将)」そうです。
局面は後手玉に対する有効な攻めがないので、後手良しの終盤戦です。
手番を握った後手は先手玉をどう寄せるかですが、2六の馬が強力なのでこれに働きかけたいところ。候補手としては△3五金や△1四桂などが考えられます。
他の考え方としては2六の馬を相手にしないという発想もあり、△2八金と下から攻めるのもありそうです。
実戦は△3五馬と2六の馬を消す指し方でした。
馬がいなくなった先手玉は薄く、さすがの久保九段も粘り切れずに郷田王将の勝ちとなりました。
まずは1勝を返した郷田王将。次局は先手番ですので、連勝を決めたいところです。
振り飛車はあまり先後の差がないというのは昔の話ですが、久保九段の後手番らしい捌きを見てみたいですね。
戦型予想はゴキゲン中飛車対超速▲3七銀戦法とピンポイントで挙げてみます。
第66期王将戦七番勝負第5局
郷田真隆(ごうだ・まさたか)王将 対 久保利明(くぼ・としあき)九段
2017年3月1・2日(水・木)
<佐渡グリーンホテルきらく>新潟県佐渡市しいざき温泉
立会:佐藤義則(さとう・よしのり)八段
副立会:田村康介(たむら・こうすけ)七段
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