渡辺明棋王に千田翔太六段が挑戦している第42期棋王戦五番勝負。
第2局は131手で渡辺棋王の勝ちとなりました。
シリーズ成績を1勝1敗とし、改めて三番勝負となりました。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は渡辺棋王の先手番です。
千田六段の2手目△3二金と第1局同様珍しい手で始まった将棋は矢倉戦へ。脇システムと呼ばれる先後同型になりました。
今までは▲6四角△同銀▲2六銀から先手が攻めることが多かったです。ところが▲6四角に△同歩と取ったのが千田六段の新手でした。ニコニコ生放送の佐々木五段によると若手棋士の間では研究されていたようで、満を持して公式戦登場といったところでしょうか。
感想戦で「研究課題ですね」と渡辺棋王のコメントが残っています。
6四を歩で取ったことにより、後手は△6五歩から馬を作ることができました。その馬を3九に入り直し先手の攻撃陣をけん制します。
例えば、図の▲4六角に代えて▲1五銀と出ると、馬の利きを活かして△1七歩と打たれて攻めが頓挫してしまいます。以下、飛角交換から△1八飛で後手良しです。
「本譜の▲4六角は苦し紛れ」と渡辺棋王の感想があり、この辺りは後手が主導権を握っているようです。
先手の攻撃陣はすべて1筋に向かっているのですが、後手の馬がけん制していて動けない状況です。場合によっては△1六歩と突き捨てた所から逆襲されてしまう恐れもあります。うちのソフトはこの辺り、互角や後手有利という判断で、渡辺棋王も「△2九馬で困りましたね」と感想戦でおっしゃっています。
ここまで進むと△6四同歩の新手が成功している印象で、先手はここまでの指し方で工夫が必要になります。
局面は進み千田六段有利の局面となっています。
駒の損得はほぼありませんが、2枚の飛車が急所に利いていることと、手番を握っていることが大きいです。
△8五歩とタテから攻めた千田六段。
実戦は後手が桂得になったので素人目には良い攻めに見えましたが、△8五歩では△7六歩の方がまさったそうです。その展開の方が後手玉に対して「駒を渡さない詰めろがない(渡辺棋王)」局面になり、本譜より良かったとのことです。
△7七歩から△8五桂とタテから攻め続けた千田六段。遊び駒の桂馬を使って先手の守り駒である8五銀に働きかけるので、とても味の良い一手に見えます。この辺りまで考えて前図の△8五歩を打っているそうです。
しかし、同じ桂馬を使うのであれば△7七歩を入れずに単に△7三桂の方が良かったといいます。
というのも、△7七歩▲同玉が入ったため、△7三桂に▲7四銀と上部脱出の味が出て来てしまったためです。
以下、先手玉は捕まりそうで捕まらず、渡辺棋王の勝ちとなりました。
△3二金から優勢の局面を築いたものの、あと一歩が届かなかった千田六段。次局も初手▲7八金を期待してしまいます。
まずは1勝を返した渡辺棋王。勝負はこれからといったところでしょうか。
戦型は相居飛車で、角換わり腰掛け銀と予想してみます。
第42期棋王戦五番勝負第3局
渡辺明(わたなべ・あきら)棋王 対 千田翔太(ちだ・しょうた)六段
2017年3月5日(日)
<新潟グランドホテル>新潟県新潟市中央区下大川前通3ノ町2230番地
立会:佐藤康光(さとう・やすみつ)九段
記録係:高野智史(たかの・さとし)四段
解説:飯島栄治(いいじま・えいじ)七段
聞き手:山口恵梨子(やまぐち・えりこ)女流二段
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