渡辺明棋王に佐藤天彦八段が挑戦する第41期棋王戦五番勝負。
第2局は66手で佐藤八段の勝ちとなりました。
シリーズ成績を1勝1敗のタイに戻し、改めての三番勝負です。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は渡辺棋王の先手番です。
後手番の佐藤八段は、やはり横歩取りへ誘導しました。
横歩取りの△3三角戦法は基本的に先手番に作戦の選択権があり、渡辺棋王は青野流と呼ばれる作戦を採りました。△2六歩までは実戦例もある指し方で、それに対して▲3八銀と受けたのが新趣向。しかし、感想戦によると、この手が苦労する原因になったそうです。
激しい戦いが続いていますが、部分的にはよくある進行です。
攻めを続ける△6六桂に▲同歩と取ったのが佐藤八段の意表をつきました。
感想戦では▲4八玉以下難しい変化があるとのことで、ソフトに入力してみたら後手が1000点台で優勢との評価でした。
実戦の進行はソフトの評価値だけで言うと互角で、この辺りは難解な中盤戦です。
▲5五桂と中央を押さえながら攻めを見せた渡辺棋王。
ただ、「やっぱり△2六歩▲3八銀の交換が入っていると、先手玉が詰みやすくなっていますね」と、渡辺棋王がおっしゃる通り、先手にとって苦労の多い展開であることがわかります。
例えば、うちのソフトはここで▲5二角や▲8三角と打って攻める手を示しますが、先を進めていくと、角を渡さざるを得ず、渡した角で詰まされてしまう変化がありました。
△4八角打という詰み筋だったので、▲3八銀が祟っているといえますね。
銀を取られ、通常なら合駒をするところです。
しかし、それですと△2八角で受けづらくなり後手良し。ここも▲3八銀で苦労する変化といえます。
仕方のない▲3七玉に△4四角と攻防に打って、寄せの網を絞ります。
先手としては銀をタダで取られ、さらに攻め続けられてしまっては、辛い局面です。素人目にも後手良しがはっきり見えてきました。
1手空けば、という攻めでプレッシャーをかける渡辺棋王に対して、佐藤八段は見事な組み立てを見せます。
先手の角を取り、返す刀で△9二角と遠見の角を放ちました。
先手玉は詰めろになっており、さらに龍当たりです。先手玉は飛車を渡しても詰めろになるので、これで後手勝ちがはっきりしました。
実戦の詰み手順は3八の銀を取るものでしたので、やはり▲3八銀に苦労する展開だった、というのは結果論でしょうか。
今シリーズは後手番が連勝しています。
先日のA級順位戦最終局も5局すべて後手勝ちとのことで、ここだけ見ると先後の差は関係ないのかなと感じてしまいます。
次局は佐藤八段の先手番です。
戦型予想は、角換わり腰掛け銀。これひとつでよいでしょう。
第41期棋王戦五番勝負第3局
渡辺明(わたなべ・あきら)棋王 対 佐藤天彦(さとう・あまひこ)八段
2016年3月6日(日)
9:00~
<新潟グランドホテル>新潟県新潟市中央区下大川前通3ノ町2230番地
立会・解説:田中寅彦(たなか・とらひこ)九段
聞き手:藤田綾(ふじた・あや)女流初段
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第41期棋王戦 五番勝負 第3局 渡辺明棋王 vs 佐藤天彦八段
解説:阿久津主税(あくつ・ちから)八段
聞き手:飯野愛(いいの・あい)女流1級