渡辺明棋王に永瀬拓矢七段が挑戦している第43期棋王戦五番勝負。第3局は103手で渡辺棋王の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2勝1敗とし、防衛まであと1勝です。
では、第3局を振り返りましょう。
第3局は渡辺棋王の先手番です。▲7六歩に△8四歩に▲2六歩を選び、第2局と同じく戦型は角換わりになりました。
現地大盤解説会の佐藤紳哉七段によると、△7三銀から繰り出していくのは永瀬七段得意の指し方とのことです。
角換わりの後手棒銀対策は、▲9六歩と銀を出させない手法が一般的。本局の渡辺棋王はあえて五段目に出させて▲8八銀で受けました。
狙いについて「左辺はいったんへこんでおいて、その間に右辺で桂を跳ねて形を決めてしまう狙いでした」とブログに書かれています。
右桂をポンポンと5段目に飛び出し、それを△4四銀と受けたのでこう着状態になりました。
変えて△2二銀の受けなら▲7七桂と左の桂馬も使って中央に殺到する狙いがあります。▲8八銀と引いて受けたので生じている筋ですね。
△2二歩も仕方ない受けで、△2三歩なら後に▲2二歩~▲5三桂成で▲5五角や▲3一角があります。
このへこみ方は後で立て直しづらいので、先手がポイントを挙げたように感じます。
昼休明けの一手は△7二金。飛車の横利きを止め、玉から離れるので、瞬間的には愚形です。
金の動きだけでいうと△6二金が良いのですが、感想戦コメントによると「▲8六歩△同銀▲7一角でつぶれてしまう懸念がある」とのことです。永瀬七段はこの後△8一飛~△6二金と形を直し、次の戦いに備えました。
ちなみに、図の局面で▲3三歩をうちのソフトは指摘しており、▲銀△角桂の駒損で龍を作っていく変化が一例で先手良しというもの。ひとつ読み抜けがあると攻めが切れてしまうので、踏み込むのは勇気が要ります。
お互いに陣形を整え、さてどこから攻めるか?という局面です。
渡辺棋王の手は5筋の歩に伸びました。4五の桂馬と連動して、玉頭を攻める狙いです。一見タダですが、5三のマス目をこじ開けることがポイント。▲8六歩から銀交換をして▲9七角が、飛車取りと玉頭へ銀の打ち込みを見て厳しいという仕組みです。
前述のソフトの攻めと比べて、こちらの方が駒損なく攻めることができます。
永瀬七段は△6四歩と水面下の▲9七角に備えますが、玉頭を攻められ、辛い展開です。
駒得した先手がやや指しやすい局面です。
ここで切り札の▲8六歩が出ました。通常であれば、攻めの銀と守りの銀の交換は攻め有利。ゆえに守り側から交換を望むことはありません。
しかし、この場合は2九の飛が8九の桂馬にヒモをつけていることや、後手の飛車が1段目からずれた時に厳しい手が生じることなどがあり、成立しています。
図で△5五桂の攻め合いは▲5六銀△3八角▲5五銀と飛車を見切って攻め合われると玉形の差で先手が良くなります。
以下、着実にリードを広げた渡辺棋王が押し切りました。
棋譜コメントによると、棋王戦五番勝負の先手番が8連勝中とのこと。次局先手番の永瀬七段にとって心強い情報です。渡辺棋王もブログで先手番の連勝について触れられています。
戦型予想は角換わりが本命。もしかしたら渡辺棋王のゴキゲン中飛車もあるかもしれません。
第43期棋王戦五番勝負第4局
渡辺明(わたなべ・あきら)棋王 対 永瀬拓矢(ながせ・たくや)七段
2018年3月20日(火)
<都市センターホテル>東京都千代田区平河町2-4-1
立会:青野照市(あおの・てるいち)九段
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