羽生善治名人に佐藤天彦八段が挑戦している第74期名人戦七番勝負。
第1局は129手で羽生名人の勝ちとなりました。
では、第1局を振り返りましょう。
振り駒の結果、羽生名人の先手番となりました。
3手目▲2六歩に7分の考慮時間を使ったので、横歩取りを避けるかとも思われましたが、第1局は堂々と受けて立ちました。
佐藤八段得意の△7二銀型に、このタイミングで▲3六歩と突くのはやや珍しい手。よくあるのは▲3八金や▲3八銀です。
ここから佐藤八段が△7四飛から大きく動きます。
前図から大きく動いた佐藤八段。その結果、△2三銀や△3三桂と盤上の駒が使え、角を持ち駒にしました。
対する羽生名人の陣形は、▲7七金がやや離れており、▲8五飛もどことなく不安定です。そして、△2八歩を受けるために▲4六角と手放すようでは、やや辛い展開となりました。
羽生名人に辛抱の手順が続きます。それでも△2四銀と金銀の連結が離れた瞬間をとらえ飛車交換を挑み、チャンスをうかがいます。
金銀がバラバラとみた佐藤八段の△4三角が意表の一着で、控室でも驚きの声が上がったそうです。
自陣は引き締まりましたが、▲3七角と△4三角の働きの差がそれほど無くなったので、ずいぶんと羽生名人が盛り返した印象があります。
局面が落ち着き、横歩取りの中盤とは思えないほどじっくりした囲い合いの手順を経て、どう攻めの形を作るかという局面になりました。
羽生名人の▲5六歩~▲4八角~▲7五角が角の働きに差をつける構想で、これを支えるのがその前の▲7八玉~▲6八銀でした。
超一流の組み立てに、並べていて思わず震えました。
ニコニコ生放送で解説していた渡辺竜王いわく、「スーパー十字飛車」の▲4四飛に△4五飛と派手なやり取りがありつつも、難解な終盤戦です。
局面が落ち着いてみると、先手には▲4七歩という確実に駒得する手があり、この辺りでアマチュアにもはっきり先手良しと分かります。
以下、追いすがる佐藤八段を、精度の高い手順で振り切り、名人強しを印象付ける1局となりました。
次局は佐藤八段の先手番ですので、特に変化しなければ角換わり腰掛け銀が有力です。また、羽生名人が後手なので、王将戦でも見せた四間飛車穴熊が出るかもしれない、という期待もできそうです。
第74期名人戦七番勝負第2局
羽生善治(はぶ・よしはる)名人 対 佐藤天彦(さとう・あまひこ)八段
2016年4月22・23日(金・土)
9:00~
<ホテルブエナビスタ>長野県松本市本庄1-2-1
立会:大内延介(おおうち・のぶゆき)九段
朝日副立会:中村太地(なかむら・たいち)六段
毎日副立会:飯島栄治(いいじま・えいじ)七段
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第74期名人戦七番勝負 第2局 初日 羽生善治名人 vs 佐藤天彦八段
解説:飯塚祐紀(いいづか・ひろき)七段
聞き手:熊倉紫野(くまくら・しの)女流初段
第74期名人戦七番勝負 第2局 2日目 羽生善治名人 vs 佐藤天彦八段
解説:佐藤康光(さとう・やすみつ)九段
聞き手:山田久美(やまだ・くみ)女流四段