里見香奈女流王座に加藤桃子女王が挑戦している第7期女流王座戦五番勝負。
第1局は156手で加藤女王の勝ちとなりました。
では、第1局を振り返りましょう。
振り駒の結果、里見女流王座の先手番となりました。里見女流王座の初手は▲5六歩。堂々の中飛車宣言です。
対する加藤女王は2手目△8四歩から居飛車を選択しました。最近多い先手中飛車対策として、居飛車は角道を開けずに左美濃に組む指し方があります。
里見女流王座は交換した5筋の歩を▲5四歩と垂らし、積極的にリードを奪いに行きました。3手かけて交換した歩なので、決断の一着といえます。
5筋の拠点を生かすべく、端角を織り交ぜながら中央で銀交換を果たし、拠点に打ち込んでいった里見女流王座。好調な攻めのようですが、6九の金や8九の桂が立ち遅れているので、形勢はほぼ互角でしょう。
端角を追う△9四歩に実戦は▲7七角と自然な位置に引きました。そこで△6五桂が気持ちの良い跳ね出しで、後手の5一角も使えそうなのでとても効率が良いです。
ここでは我慢して▲6八角と引いておくのもあったかもしれません。
感想戦によるとこの辺りの数手が本局のポイントだったようです。
4四の金取りなので、自然に△4三金と当て返したいところですが、▲5一龍~▲5五角の王手飛車があります。
本譜の△4三歩には▲5一龍~▲7三角という手段があり、こちらの方が綾があったようです。
後手としては△4三歩に代えて△4二飛と受ける方が良かったと感想戦では結論付けられました。
図をソフトに検討させると△6二角という受けも指摘しており、▲6二同龍~▲5三角にはそこで△4二飛で後手の角がさばけてより良いという判断でした。
局面はやや後手良しの中盤戦。
ここでどう指すかは棋風が表れるところです。
控え室の糸谷八段は△2四歩と突き、早めに▲3四桂の筋を緩和したいという見解でした。次に△2三銀打が指せれば後手玉が見えなくなるとのこと。受けの棋風ならこう指すところですね。
加藤女王は攻めの棋風なので、△7七角成から攻める順を選択しました。▲3四桂の筋は先手の駒が少ないため、まだ大丈夫という判断です。
いずれの指し方も後手良しに変わりはありません。
後手がどうやって決めるかという局面。
実戦は△3八金と打って詰めろを続けましたが、上部を厚くされて少々ややこしくなってしまいました。
感想戦で糸谷八段が指摘したように、ここは△3八銀の腹銀が手筋の一着。これも詰めろになっており、▲3二金~▲3三金と取っても金が3枚あるため先手玉が詰みとなります。
金銀の違いで以下の手順が変わってくるあたり、将棋の奥深さを感じますね。
加藤女王の先勝で奪還へ視界良好です。
第2局まで時間があるので、里見女流王座の巻き返しにも期待ですね。
戦型は、今シリーズも里見女流王座が中飛車で通す、と予想します。
第7期女流王座戦五番勝負 第2局
里見香奈(さとみ・かな)女流王座 対 加藤桃子(かとう・ももこ)女王
2017年11月11日(木)
<芝苑>大阪府大阪市北区西天満4-9-16
立会:淡路仁茂(あわじ・ひとしげ)九段
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第7期女流王座戦 第2局 里見香奈女流王座 vs 加藤桃子女王 五番勝負
解 説:佐藤和俊(さとう・かずとし)六段
聞き手:塚田恵梨花(つかだ・えりか)女流1級