王将戦

第66期王将戦七番勝負第6局

郷田真隆王将に久保利明九段が挑戦している第66期王将戦七番勝負。
第5局は153手で郷田王将の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2勝3敗とし、郷田王将が巻き返しています。

では、第5局を振り返りましょう。

第66期王将戦七番勝負第5局-1

第5局は郷田王将の先手番です。
後手の久保九段はゴキゲン中飛車に構え、対する郷田王将は超速▲3七銀戦法を採りました。
玉を美濃に囲って△4二銀とする指し方は昔からあり、そこで居飛車が▲4五銀とするのがよく指されている手順です。
その局面で郷田王将の指し手は▲3五歩。前例はありません。△3五同歩と取らせて▲6六歩と角道を止めるのが郷田王将の新構想で、一局の命運をこれに託しました。

 

第66期王将戦七番勝負第5局-2

▲6六歩と角道を止めたことによって、中飛車側の捌きを押さえています。ゆえに久保九段は△5一角~△6二角と転換して活用します。
先手としては2筋を破り部分的には上手くいっています。ただ、▲2三銀成や▲2三銀不成ではやや重い印象があります。
そこで郷田王将の指した手は▲3六歩でした。これは持ち駒の歩を打ったものです。
これで▲3五銀と引くことができ、飛車先を通しながら銀を中央に活用することができます。

 

第66期王将戦七番勝負第5局-3

後手は先手の6筋の位を消し、2筋を破られた代償を求めて手を作りに行きます。
△3七歩が控室でも「気づきにくい手」と評された一手。▲同桂なら△3六銀が桂取りになって調子が良くなります。
本譜は▲2六飛と歩を払ったので、△3八歩成とすぐに成り捨て△3四歩で銀を取りに行きました。
戻って△3七歩では単に△3六銀もあったそうで、これなら千日手模様の展開もあり得たとのことです。

 

第66期王将戦七番勝負第5局-4

難解な手順が続いた中盤戦でしたが、図の局面では後手のほぼ角損となりました。
先手としては右にある金銀の働きが弱く、後手玉が堅いのでどうするかが悩ましいです。
郷田王将は▲6九歩と底歩を打ちました。これで後顧の憂いを無くし、攻めに専念する狙いです。
これを見て、「魚釣りの底歩」と言われた伊藤看寿の▲6九歩を思い出しました。

 

第66期王将戦七番勝負第5局-5

局面は先手優勢ながら、嫌みがついているので実戦的には難しいところです。
郷田王将の打った▲7九香が「下段の香車に力あり」の格言に沿った手で、攻防によく働いています。香車という駒は遮るものがなければ8マス動くことができ、これは金駒より多いのです。
こんな風に十二分に活用できると指がしなります。(個人的な感想です)

 
新構想の仕掛けでさらに1勝をあげた郷田王将。ひとつずつ巻き返しています。
七番勝負で3連勝したらほぼシリーズを制することができるのが今までの傾向ですから、久保九段の逃げ切りも十分にあります。
次局は久保九段の先手番です。戦型は石田流か中飛車と思われますが、中飛車と予想してみます。
 
 
第66期王将戦七番勝負第6局
郷田真隆(ごうだ・まさたか)王将 対 久保利明(くぼ・としあき)九段
2017年3月14・15日(火・水)
<グランドホテル浜松>静岡県浜松市中区東伊場1-3-1
立会:森下卓(もりした・たく)九段
副立会:飯塚祐紀(いいづか・ひろき)七段

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