郷田真隆王将に久保利明九段が挑戦している第66期王将戦七番勝負。
第3局は124手で久保九段の勝ちとなりました。
シリーズ成績を3連勝とし、復位まであと1勝としました。
では、第3局を振り返りましょう。
第3局は郷田王将の先手番です。第1局と同じく初手▲2六歩から居飛車を指向する先手に対して、後手の久保九段は角道オープン型四間飛車を採用しました。
よくある指し方としては▲6八玉のタイミングで△8八角成と交換して壁銀を強要するものがあります。
本局は振り飛車から角交換をせず△3三角と相手から交換させる指し方でした。
左桂がさばけるか、桂頭がキズになるかが焦点です。
郷田王将は△3三桂型をとがめるべく▲7七角と持ち駒の角を打って攻めを狙います。8八や6六ではなく▲7七角と打つのがミソです。
後手が桂頭を守るには△4四歩~△4三銀が形ですが、角が打ってあればそれができません。
そこで△4四角と合わせて前述の形を狙うのですが、▲6六歩と角道を止めて穴熊を目指すことができます。これが7七に角を打った効果です。
まとめると、図から△4四角▲6六歩で穴熊を目指すのが先手の狙いとなります。
桂頭攻めを見せられた久保九段は、一歩損ながら桂頭を守りました。
郷田王将もすぐには攻められないと見て、玉を左美濃へ納めます。スムーズに囲えるのも▲7七角と打った効果ですね。
局面が落ち着き、持久戦模様となりました。
先手は一歩得ながら右側の銀桂をどう使うか。後手は一歩損と歩切れなので、それをどうするか。
久保九段は歩切れを解消するべく△6四歩と突きました。この瞬間をとらえて▲3六飛と2枚換えを見せるような手もありましたが、本譜はじっと歩交換に応じて、右銀の活用を図りました。
盤の右側にいたお互いの駒がだんだんと玉に近づいていきます。
特に後手陣はきれいにさばけており、指された時は珍しい引き場に見えた△6三飛がよく働いています。さばきのアーティストの面目躍如ですね。
先手の郷田王将も右銀を6六まで持っていき、と金を作り、バランスを保ちます。
そのと金を捨てたのが図の局面。直前に△8四角と出て5五が弱くなったことを見越しており、△同金なら▲5五銀と中央で銀交換して角がさばけます。
それが嫌と見て、図から後手は△5六金と玉に近づけて勝負です。
ここまで来ても形勢不明の終盤戦で、激戦となっています。
▲5三歩と垂らして「いけそうな気がしたのですが」と郷田王将。対する図の△4二歩も歩の手筋でした。
「△4二歩なら、何とかなると思っていましたが」とおっしゃる郷田王将でしたが、図から▲同飛成△2四角▲3三歩と0手で角を打たれ、その利きを活かして△6八銀と打たれてみると形勢は思わしくないようです。
図の▲5三歩と△4二歩を取り除いた局面なら、▲6三銀から千日手含みの変化もあり、結果的にはこちら選んだ方が良かった可能性もあります。
3連勝で復位に王手をかけた久保九段。久しぶりに振り飛車党のタイトルホルダー誕生か?という状況に歓喜するファンも多い事でしょう。
ただ、将棋界には3連勝4連敗の前例もあり、郷田王将の巻き返しも十分に考えられます。
戦型予想は、先手番の久保九段が中飛車にする、としてみます。
第66期王将戦七番勝負第4局
郷田真隆(ごうだ・まさたか)王将 対 久保利明(くぼ・としあき)九段
2017年2月13・14日(月・火)
<矢掛屋>岡山県小田郡矢掛町矢掛3050-1
立会:井上慶太(いのうえ・けいた)九段
副立会:菅井竜也(すがい・たつや)七段
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