羽生善治王座に佐藤天彦八段が挑戦している第63期王座戦五番勝負。
第3局は86手で佐藤天八段の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2勝1敗とし、初の王座まであと1勝としました。
では、第3局を振り返りましょう。
第3局は羽生王座の先手番です。
後手の佐藤天八段は、第1局と同じく横歩取りに誘導し、羽生王座も避けませんでした。
第1局では▲3八銀型でしたが、本局は▲4八銀型を選択した羽生王座。
このタイミングの▲4八銀は、相手の攻めの形によって、一番いい受けの形を選べるようにしたものです。
本譜は早い飛車ぶつけを警戒して、よくある中住まいになりました。
今回、現地の大盤解説会に行ってきました。
会場についた時にはちょうどこの局面でした。
対局直後の両対局者の感想によると、「非常手段(羽生王座)」の▲2一角といいます。
本譜はこの後、この2一の角をめぐる攻防になりました。
後手は△2四歩と飛車道を止めた後、3回連続で金を動かしました。
これは2一の角を取ってしまおうという狙いで、この△2二角もそれに沿った一手です。
意味としては、桂馬を交換した後、2四のマス目に利かして先手の飛車が走ってくる手を消しています。
ここで夕食休憩に入り、現地では次の一手が出題されました。
いよいよ2一の角が助からなくなった羽生王座。銀のタダ捨てで攻めをつなぎます。
△同銀なら▲4三桂成で、悪いながらも2一の角が働きます。
本譜は△3五銀と桂馬を取り、2一の角を取ることに成功しました。
ゆえに、先の▲2一角はあまりいい手ではなかったことになります。
戻って、▲2一角では▲5六角が有力で、控室の佐藤紳哉六段とうちのソフトが指摘していて、先手十分という評価でした。
ここ数手バタバタと進んで、このまま後手が押し切るかに思わにましたが、突如長考に沈んだ佐藤天八段。
当初△5九角~△5八成桂を読んでいたそうですが、意外に難しいことに気が付いたそうです。
試しにソフトに聞いてみたら、その手順では互角の評価に戻っていました。
具体的には△5八成桂以下、▲8八玉△6八成桂▲同金△同角成▲7八金とはじいて、もう一勝負できそうです。
と、ここまで書いて、ソフトは▲7八金には△8九金!から寄せて後手良しと言います。いずれにしても難解な変化です。
佐藤天八段のツイッターによると、長考の最後の方で本譜の手順を発見したそうで、たしかにこちらの方が人間には明快に見えます。
質駒の銀を取って、きれいに詰まし上げた佐藤天八段が、嬉しい2勝目を挙げました。
初タイトル奪取まであと1勝です。
次局は先手番という好材料もあり、次で決めたいと思われているのではないでしょうか。
対する羽生王座はカド番に追い込まれ、後がありません。
第3局でカド番に追い込まれたのは、第61期の中村太地六段以来のことで、その時は千日手を含む2連勝でタイトルを防衛しています。
今期はどうなることでしょうか?
文字通りの大一番、熱戦を期待しましょう。
第63期王座戦五番勝負第4局
羽生善治(はぶ・よしはる)王座 対 佐藤天彦(さとう・あまひこ)八段
2015年10月6日(火)
9:00~
<仙台ロイヤルパークホテル>宮城県仙台市泉区寺岡6-2-1
立会:森けい二(もり・けいじ)九段
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第63期王座戦五番勝負 第4局 羽生善治王座 vs 佐藤天彦八段
大盤解説は13:00~
解説:千葉幸生(ちば・さきお)六段
聞き手:室谷由紀(むろや・ゆき)女流二段