佐藤康光九段と佐藤天彦八段が争う第41期棋王戦挑戦者決定戦二番勝負。
第2局は124手で佐藤天彦八段の勝ちとなりました。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は康光九段の先手です。
3手目に▲6六歩と角道を止めて、横歩取りを避けました。研究にはまるとそれまでという横歩取りよりは、力勝負にしたいという意図でしょうか。
その手を見て、天彦八段は△3二飛と振り飛車にしました。今期王座戦の挑戦者決定戦でも3手目▲6六歩に対して△3二飛としており、天彦八段はこの指し方に自信を持っているようです。
康光九段も向かい飛車にして、戦型は相振り飛車になりました。
相振り飛車では攻めに桂馬を使う組み立てをするのがセオリーですが、康光九段の攻めは棒銀でした。
控室では「男の棒銀だ」と評されたように、相振り飛車には珍しい指し方です。
せめて▲9五歩が入っていると香車も参加する4枚の攻めになるのですが、飛角銀3枚でどう攻めるか。
康光九段、腕の見せ所です。
棒銀で攻め立てる康光九段。
自陣に目を向けると角が取られてしまう形になっている状況で飛び出した攻めの手は、▲9三銀成!控室でも「天才だ!」と声が上がるほどの妙手でした。
成銀を取るのは▲9五歩が継続手で、これがギリギリ間に合う配置になっています。「端玉には端歩」と格言にもありますね。
▲9五歩型で▲9三銀成はアマチュアでも思いつきそうですが、▲9六歩型でも飛び込む手が成立すると読んでいた康光九段。
緻密流の面目躍如です。
▲9三銀成を取るのダメと見た天彦八段は△8五歩と怪しげな受けを放ちます。
ここで金の連携を崩す▲6三歩が手筋の一着に見えましたが、これがあまり良くなかったそうです。
感想戦によると、後手の金銀を壁にしたまま▲9五歩と初志貫徹の端攻めを続ければ、▲9八飛の応援もあり、先手も十分に指せていたとのことでした。
天彦八段の勝負手が通り、この辺りでは難しい形勢になっています。
指し手も渋く、数手前から△7二銀▲2八玉△2三歩▲5六歩と進み、図の局面になりました。
渋い展開が続くと思いきや、突如△7七角成~△3三歩と激しく行った天彦八段はこの辺り、「暴発かと思いましたが、手が見えませんでした」という感想を残されています。
同じ角切りでも△6八角成▲同歩△7七角成は、▲4二角があって後手が大変です。
先手は金の遊び駒が痛く、康光九段も頑張って活用しましたが、天彦八段が押し切りました。
天彦八段は王座戦に続き、棋王戦でも挑戦者に名乗りをあげました。
今、一番乗っている棋士と言っても過言ではないでしょう。
渡辺棋王とはプライベートでも仲が良いことは有名ですが、盤上ではどんな戦いを繰り広げるのでしょうか?
とても楽しみですね。
第41期棋王戦五番勝負の日程は下記の通りです。
第1局 2月11日(木) 愛媛県松山市「大和屋本店」
第2局 2月20日(土) 石川県金沢市「北國新聞会館」
第3局 3月6日(日) 新潟県新潟市「新潟グランドホテル」
第4局 3月21日(月・祝) 栃木県宇都宮市「宇都宮グランドホテル」
第5局 3月31日(木) 東京都渋谷区「東京・将棋会館」