渡辺明棋王に佐藤天彦八段が挑戦する、第41期棋王戦五番勝負。
第1局は100手で渡辺棋王の勝ちとなりました。
では、第1局を振り返りましょう。
振り駒の結果、佐藤八段の先手番となりました。
やはり得意の角換わりに誘導し、渡辺棋王もそれを受けて立ちます。
渡辺棋王は後手角換わりの待機策を得意にしている印象があり、金の動かし方にも細かい神経を使っています。例えば、先手の右金が4七に上がった時に△4三金右という形を用意するのがひとつのポイントで、これで先手の仕掛けを封じているのです。
この辺りは前例のある進行で、今期の王位戦でも指されています。
そこに現れた△7三角が渡辺棋王の新手で、前例の王位戦では△9二飛でした。
△7三角以下▲6五歩△6四角▲同歩と6筋の歩が伸びてくるので後手としては嫌に見えましたが、渡辺棋王はご自身のブログで「ちょっと無理かとは思いつつも、一度は指してみる価値があると感じていた手」と、書かれています。
先手陣は2八飛と4八金の悪形が残ってしまったのがやや辛く、直している余裕もない局面になっています。
この局面になるなら△7三角の新手も成立していそうですが、今後の研究が待たれますね。
▲4五桂と「攻め合う方針で桂を跳ねた(佐藤八段)」に対し、渡辺棋王も△7六歩と取り込んでいきました。
王手で銀が取れるので、アマチュア的には△7六歩の瞬間にすぐに▲3三桂成と取ってしまいたくなります。
その辺りも渡辺棋王のブログに書いてあるので、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
自陣に手を入れるか悩ましいところですが、佐藤八段の選択は攻め。
▲2四歩から継ぎ歩に垂れ歩で玉頭に拠点を作り、駒が入ったら打ち込んでいくぞという体勢です。
ちょうど6四に銀の質駒があるので、これで先手が上手くやったようですが……。
玉頭に拠点をつくられ、駒を渡せないという制約がある後手の攻め。その難題に渡辺棋王の答えは、歩による攻めでした。
手筋の本に出てきそうな手の組み合わせで拠点を築き、持ち駒の角を攻防に打ち据え、ギリギリ後手の一手勝ち。鮮やかなお手並みでさすが渡辺棋王という組み立てでした。
こうなると攻防の要所を占めていた先手の4六角があまり働いておらず、「勝ち将棋鬼の如し」と思わずにはいられません。
後手番で幸先の良い1勝を挙げた渡辺棋王。
棋王戦では10連勝目を飾りました。
次局は佐藤八段が後手番ですので、戦型予想は横歩取りが大本命。大穴に3手目▲6六歩からの相振り飛車を予想します。
第41期棋王戦五番勝負第2局
渡辺明(わたなべ・あきら)棋王 対 佐藤天彦(さとう・あまひこ)八段
2016年2月20日(土)
9:00~
<北國新聞会館>石川県金沢市南町2-1
立会:橋本崇載(はしもと・たかのり)八段
記録係:梶浦宏孝(かじうら・ひろたか)四段
解説:村山慈明(むらやま・やすあき)七段
聞き手:井道千尋(いどう・ちひろ)女流初段
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第41期棋王戦 五番勝負 第2局 渡辺明棋王 vs 佐藤天彦八段
解説:木村一基(きむら・かずき)八段
聞き手:山口恵梨子(やまぐち・えりこ)女流初段