女流王位戦

里見香奈女流五冠が女流王位を防衛!

里見香奈女流王位に伊藤沙恵女流二段が挑戦していた第28期女流王位戦五番勝負。
第5局は116手で里見女流王位の勝ちとなりました。
シリーズ成績を3勝2敗とし、女流王位防衛です。

では、第5局を振り返りましょう。

第28期女流王位戦五番勝負第5局-1

第5局は改めて振り駒が行われ、伊藤女流二段の先手番となりました。
3手目▲6六歩から向かい飛車に振った伊藤女流二段に対し、里見女流王位は△3二飛と三間飛車へ。一昔前によく指されていた相振り飛車です。
ところが伊藤女流二段の陣形はなかなか見慣れない形で5六に腰かけているのは「金」。
図で▲4五金という手も見えますが、以下△同桂▲2二角成△5七桂成で居玉の先手はひとたまりもありません。

 

第28期女流王位戦五番勝負第5局-2

5六の金も珍しい形ですが、伊藤女流二段は▲5八玉と相振り飛車ではほとんど見ない中住まいを選ばれました。金銀がバラバラなので、指しこなすには力が必要です。
中住まいの特徴としては、バランスが良い反面、一点を狙われると数が少ないので破られる可能性が高いです。
ゆえに里見女流王位は2筋に駒を集めました。
そこで出た▲3六銀がこの場合の受けで、なかなか見られない手ですね。

 

第28期女流王位戦五番勝負第5局-3

前図で攻めの銀と守りの銀を交換したので、部分的には後手がポイントを挙げました。
後手は7五の銀を追い払くべく△7四歩と突きました。▲6六銀なら△7三銀打が里見女流王位の予定だったそうです。
ここで指された伊藤女流二段の1手は▲8四銀。歩頭に銀を出ていきました。駒損になるのでアマチュアには真似しづらいところです。

 

第28期女流王位戦五番勝負第5局-4

先手は銀損の代償に玉頭に拠点を作り、後手に△9二銀と打たせました。
控室の検討では「銀得ながら後手も難しい」という評判だったそうです。伊藤女流二段の優れた大局観が表れていますね。
この局面では部分的に▲5五角の筋が厳しいので、それを実現するべく持ち駒の銀を3五に手放しました。
実戦はここで▲7五歩とコビン攻めを強力にするべく歩を突き出しましたが、△5四歩と▲5五角を消されてみるとイマイチだったようです。
感想戦によるとここでは▲3四銀が有力だったそうで、以下△3二歩▲5五角から3三の桂馬を取って攻めたほうが良かったそうです。

 

第28期女流王位戦五番勝負第5局-5

局面は後手銀得ながら難解な形勢です。
先手陣は飛車に弱いので、それを取りに行く手が厳しくなります。それに基づくと△7六歩は狙いの一着なのですが、よく見ると3三のと金で駒を取られるタイミングです。
あまり目立ちませんが、このように細かいところでポイントを稼ぐためには読みの量が必要で、里見女流王位の強さを感じられる一着ではないでしょうか。

 
以下、難解な終盤戦でしたが、7筋を破った里見女流王位の攻めがわずかに早く、押し切りました。

里見女流五冠はこれで女流王位を3連覇、通算4期の獲得となりました。
女流王位は通算5期獲得でクイーン称号の資格が得られますので、次シリーズはそれをかけた戦いになります。
奨励会との兼任で大変な日々を過ごされていると思いますが、女流棋戦で結果を残すのはさすがの一言です。

里見香奈女流五冠、女流王位防衛おめでとうございます!

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