里見香奈女流名人に上田初美女流三段が挑戦している第43期女流名人戦五番勝負。
第4局は91手で里見女流名人の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2勝2敗とし、フルセットへ突入です。
では、第4局を振り返りましょう。
第4局は里見女流名人の先手番です。
3手目▲7五歩から石田流を目指す里見女流名人に4手目△1四歩と第2局と同じ出だしになりました。
第2局は▲4八玉から乱戦になりましたが、本局は▲5八金左とあらかじめ受けておき、穏やかな持久戦へ。
持久戦になると序盤早々に取った1筋の位が生きてくるので、後手としても不満のない進行です。
先手は石田流+美濃囲い、後手は1筋の位+銀冠とガッチリ組み合う展開になりました。
先手の▲4六角が少し珍しい転換で、▲7四歩と動く手を成立させるのが狙いです。
やむない△同歩に▲6五歩とさらに突っかけて本格的な戦いに突入しました。お互いの角筋が通るので、とても怖い戦いですね。
この後、6・7筋を中心に攻め合いが展開されました。
局面はお互いに攻めの桂馬を交換して一段落しました。後手は金が7三へ行っているのが気になるところです。
図は6二にいた飛車を△6三飛と浮いたところ。感想戦によると「飛車上がりは疑問でしたね」と上田女流三段は言います。
代わる手として△4四桂と銀を攻める手が検討され、▲4五銀△5五銀とタダの所に出る派手な攻めもあったとのことです。
ちなみにうちのソフトは△6三飛に変えて△6五歩を指摘しており、局面を落ち着かせて7三の金を活用する構想のようです。たしかにこれもありそうですね。
「▲5七桂は1秒も考えていませんでした」という、上田女流三段。確かに味わい深い桂打ちですね。
飛車を退かしたあと▲4五桂と次の活用先があり、よく働いています。
後手は飛車をどうするかですが、どうも△6三飛とタテに引いた方が良かったそうです。先手の飛車をさばかせない方針ですね。
本譜は△7五飛とヨコに行ってしまったため、▲6六飛とさばかれてしまいました。
そこから△5四桂という手段もありますが、▲5四同歩△6六角▲7三角成で駒得になるので、これも先手良しとなります。
難解な終盤戦になりました。▲5二飛に△1三玉と逃げたのが図の局面です。
△1三玉の形は「銀冠の小部屋」と呼ばれたりもしていて、「玉の早逃げ、八手の得」の格言通り好手になりやすい形です。
そこで「端玉には端歩」の格言通り▲1六歩としたのが平凡ながら好手。玉を直撃するので破壊力があります。
どうやら△1三玉は時期が早かったようです。感想戦では△1三玉に代えて△4六銀と飛車を取る展開が検討され、本譜よりは後手も戦えたようです。
挑戦者連勝のあと、女流名人が連勝で返して、フルセットになりました。泣いても笑っても決着局。注目の一戦となります。
改めて振り駒ですので戦型予想は難しいところですが、ここまでの流れを見ると対抗形が有力です。
里見女流名人が先手なら石田流三間飛車、後手ならゴキゲン中飛車と予想します。
第43期女流名人戦五番勝負第5局
里見香奈(さとみ・かな)女流名人 対 上田初美(うえだ・はつみ)女流三段
2017年2月22日(水)
<東京将棋会館>東京都渋谷区千駄ヶ谷2-39-9
立会:藤井猛(ふじい・たけし)九段
記録係:高浜愛子(たかはま・あいこ)女流2級
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