里見香奈倉敷藤花に室谷由紀女流二段が挑戦している第24期倉敷藤花戦三番勝負。
第1局は136手で室谷女流二段の勝ちとなりました。
では、第1局を振り返りましょう。
振り駒の結果、里見倉敷藤花の先手番となりました。初手▲2六歩から飛車先を決め、角交換系の振り飛車を警戒する指し方です。
対する、室谷女流二段は角道を止めた中飛車を選択しました。局後のインタビューによると「後手番になったら△4四歩と止めて本譜のように指そうかなと思っていました。」とのことで、事前の研究がうかがえます。
後手は中飛車でしたが、△4二飛~△3二飛と相手の形に合わせて柔軟に飛車の位置を変えています。
里見倉敷藤花は左美濃に組み、中央から小競り合いを始めます。一歩持てれば先手も満足ですが、室谷女流二段の△4三金が上手い対応で狙いを外しました。
この△4三金やこの後出てくる△7三角は大山康晴十五世名人の時代によく指されており、とても懐かしい指し回しに感じます。
2四に飛び出した角を6八に引き、飛車先を通した里見倉敷藤花。そして、飛成を受けるために2二に歩を打った室谷女流二段。
里見倉敷藤花は、この△2二歩では△6五歩が気になったと感想戦でおっしゃっています。2一の桂馬がさばけているの飛成を受けない発想はなるほどです。
ちなみにうちのソフトは△2二歩に変えて△4四金を示しており、やはり飛成を受けませんでした。
お互いに気になる駒があり、先手は3七の銀、後手は4三の金です。
後手はそれを活用するべく△5四金と歩頭に出ました。
▲同歩なら△3七角成で後手良し。金銀交換で先手の遊び駒をさばかせますが、馬ができたことと、飛車取りで手番を握ることができそうなので、十分おつりが来ます。
この△5四金に対して実戦は▲7七金寄と当たりを避けました。
先手は盤の右側に駒が残り、後手優勢の終盤戦。「角筋は避けよ」の格言通り▲9八玉と5五角のラインを避けたところに、「端玉には端歩」と△9五歩が急所の一着でした。こうなると、先手の6八の角、3七の銀、4六の桂の働きが弱く、先手の分が悪いことがよくわかります。以下、9筋の制空権を握った室谷女流二段が勝ち切りました。
幸先よく勝利をおさめた室谷女流二段。早くもタイトル奪取まであと1勝としました。
前年度から続いていた里見倉敷藤花の連勝は15で止まりましたが、恐ろしい勝ちっぷり。巻き返しも十分に考えられますね。
戦型は、里見倉敷藤花の居飛車に、室谷女流二段の角交換四間飛車と予想します。
第24期倉敷藤花戦三番勝負第2・3局
里見香奈(さとみ・かな)倉敷藤花 対 室谷由紀(むろや・ゆき)女流二段
第2局 2016年11月19日(土)
第3局 2016年11月20日(日)
<倉敷市芸文館>岡山県倉敷市中央1-18-1
立会:高群佐知子(たかむれ・さちこ)女流三段
棋譜中継はこちら
倉敷藤花戦中継サイト
現地イベント情報はこちら
第24期倉敷藤花戦イベント情報(アルスくらしき)