羽生善治棋聖に豊島将之七段が挑戦していた第86期棋聖戦五番勝負。
第4局は99手で羽生棋聖の勝ちとなりました。
シリーズ成績を3勝1敗とし、棋聖を防衛しました。
8連覇は、大山康晴十五世名人の記録を抜き、単独1位となります。
では、第4局を振り返りましょう。
第4局は羽生棋聖の先手。
「矢倉が続いていたので」と、インタビューでおっしゃっていた羽生棋聖は、初手▲2六歩。
豊島七段も応じて、相掛かりになりました。
この△5五銀が豊島七段用意の構想でしたが、次の▲6五歩を見て、「自信がなくなった」とのことです。
上図から、仕方がない、といった手順が続き、後手の桂損となりました。
そして、ここでじっと△3一玉。
▲7五角や▲5四桂の筋を消すためとはいえ、駒損して手番も渡して、辛い一手に見えます。
ところが、先手も歩切れ、居玉、2九の桂の働きを考えると、有利とは言えない状況。
評価値は200点未満で互角との評価でした。
本局のハイライトは、ここからの3手でしょう。
▲6三歩△6一金▲6二歩成。
現地にいらしていた青野照市九段も「タイトル戦史上初めてではないか?」という旨の発言をされていました。
もし△6二同金なら、純粋に一歩損です。
羽生棋聖も「恥ずかしい」と、おっしゃっており、でも、これをタイトル戦の舞台で指したその精神力に、私は賞賛を送りたいです。
ちなみにソフトも候補手に▲6二歩成を挙げており、評価値はそれでも互角の範囲内でした。
反省した羽生棋聖の▲6二歩成に、それは許さんと△7七桂不成~△6八歩のたたきを入れた豊島七段。
▲同玉と取った手に対して、突如27分の考慮に沈みました。
現地の青野照市九段も、時間の使い方がおかしいとおっしゃっており、確かに変調を感じさせます。
ただし、形勢は微妙です。
ソフトの評価値は互角のまま続いている終盤戦。
5六のマス目を攻める△4七銀が自然な攻めに見えましたが、この後の展開を考えると、あまり芳しくなかったようです。立会人の田中九段が指摘した、△5五角▲同飛△4九馬のほうが、先手の飛車が狭く、また飛車を渡せないため、まだまだ難しかったそうです。
△4七銀辺りで、ようやくソフトも先手良しの評価になりました。
終盤まで非常に難解な勝負を繰り広げた両者。
この将棋は現地で観戦したせいもあって、名局賞候補に挙げたいと思える将棋でした。
この防衛で、8期連続14期目の棋聖を獲得した羽生棋聖。
前述の通り、連覇記録は単独1位となります。
またタイトル獲得数を92に伸ばし、記録更新中です。
現在、王位戦の防衛戦を戦い、秋口からは王座戦の防衛戦も始まります。
その間にチェスの大会にも出場されているようで、一体いつお休みになっているのでしょうか?
これからの防衛戦も期待したいですね。
羽生名人、棋聖位防衛おめでとうございます!