郷田真隆王将に久保利明九段が挑戦している第66期王将戦七番勝負。
第1局は86手で久保九段の勝ちとなりました。
では、第1局を振り返りましょう。
振り駒の結果、郷田王将の先手番となりました。
初手▲2六歩から居飛車を指向する先手に対して、後手の久保九段は得意のゴキゲン中飛車でした。
最近のゴキゲン中飛車は超速▲3七銀戦法との戦いと言ってもよく、その中で出てきたひとつが△3二銀型です。これは振り飛車の左辺をこの一手で済ませ、△5六歩から動いていこうとする狙いがあります。
図から▲7八玉に早速△5六歩と仕掛け、△5六飛型を狙って▲6五角と打って局面が動き出します。
戦いが起こっている中、後手の指し手は7二の玉を囲う△8二玉。▲4五桂など攻めの手が見えているだけに、怖いところでもあります。
これは△5四飛と走ったとき▲4五角の準王手飛車を消す意味があります。また▲4五桂にも△7二銀▲3三桂成△同桂としておき、玉の堅さと駒の働きでバランスを保ってどうか、という将棋になります。
実はこの辺りまで前例があるそうで、久保九段はそれを意識されていたそうです。
前図から▲2二歩と前例を離れた郷田王将。△4四銀と飛車取りに当たっているのにもかかわらず、▲5三歩成と踏み込みました。
感想戦で「無茶苦茶だなあと思いつつ(郷田王将)」とおっしゃるように、この後△5五歩から角を取られ、駒割は後手の角得となります。
▲5三歩成に変えて▲2五飛なら駒損する展開にはなりませんが、後手の飛車が軽いので久保九段もこれなら自信があったそうです。
▲6一飛と金取りに打ち込んだ手に対して、控室では△5一飛から千日手を懸念されていたそうです。久保九段も相当迷ったと感想戦でおっしゃっておりましたが、実戦は△4四角と攻め合いに出ました。控室も、Twitter解説の広瀬八段も、そしてうちのソフトも、当初は▲4一飛成で先手有望ではないかという雰囲気でしたが、検討を進めるうちに後手有望ではないかと評価が変わってきたのです。
特にうちのソフトは、次図の一手前まで読んで先手優勢という評価値だったので、とても不思議でした。
局面は後手優勢の終盤戦です。
前図の△4四角に続き、△9五角と角打ちで優勢を決定付けます。
これは詰めろではありませんが、現在後手玉は3手スキなので、これが間に合います。
次の△6八銀が厳しいので▲5八金右と受けましたが、続く△5七歩成が「ぴったりですね(郷田王将)」の好手段でした。
こうなると先手の4筋の駒の働きが弱く辛い展開です。
以下、手堅く寄せ切った久保九段の勝ちとなりました。
挑戦者の先勝で始まった今期王将戦。今後の展開が楽しみですね。
戦型は対抗形でほぼ間違いないでしょう。
先手番の久保九段がどこに飛車を振るのかが注目ですが、見たいという期待を込めて石田流三間飛車と予想します。
第66期王将戦七番勝負第2局
郷田真隆(ごうだ・まさたか)王将 対 久保利明(くぼ・としあき)九段
2017年1月23・24日(月・火)
<都ホテルニューアルカイック>兵庫県尼崎市昭和通2-7-1
立会:桐山清澄(きりやま・きよずみ)九段
副立会:北浜健介(きたはま・けんすけ)八段
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