里見香奈女流名人に伊藤沙恵女流二段が挑戦している第44期女流名人戦五番勝負。
第2局は91手で里見女流名人の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2連勝とし、防衛まであと1勝としました。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は里見女流名人の先手番です。第1局と同じように3手目に▲9六歩と端歩を打診し、対する伊藤女流二段は△1四歩とこちらの端を突きました。早くも駆け引きが始まっています。
両端を突き合って、戦型は対抗形に落ち着きました。
△6四歩に対して、▲7六銀が「やってみようかなと思った(里見女流名人)」という構想とのこと。この手には消費時間が記録されていないので、研究済みであることが予想されます。
里見女流名人の構想は、出っ張った後手の6筋から攻めようというものでした。▲7八金と8筋の攻めに備えて左に上がるのも隠れたポイントです。
図から伊藤女流二段は「開戦は歩の突き捨てから」の格言通り、△8六歩と突き捨てました。
しかし、この局面に限っては手抜いて▲6四歩が成立したのです。▲7六銀の効果のひとつですね。
感想戦では△6五同歩が検討され、▲同銀ならそこで△8六歩の方が良かったそうです。
▲6四歩と取り込まれ、歩損をした伊藤女流二段。感想戦では「失敗を認めて△6五歩と打つほうがよかったかもしれない」というコメントを残しています。
通常、駒損をしたら、じっとしているとジリ貧になるので動いていくのがひとつの考え方です。それに沿って、伊藤女流二段は△7七角成▲同桂△6七歩と動いていきました。
△6七歩に対して▲同金は△8七飛成ですので、▲同飛としますが、△8七飛成~△7八角が狙いの両取りです。
図の局面は、▲飛△銀の交換ながら、どちらかが取り返せれば後手の駒得になります。
格言には「両取り逃げるべからず」とありますが、里見女流名人は▲7六角と受けました。受けが利くときは受けたほうが良いですね。逃げるべからずは、受けが利かない場合。駒を取られる一手を別のところに使いましょうという意味です。
▲7六角と受けられると飛銀交換の駒損が残る後手としては辛いところ。飛車を取ってどれだけ迫れるかの勝負になりました。
駒の損得はなくなったものの、後手玉に先に迫っている先手が優勢の終盤戦です。
里見女流名人の決め方は、▲3一角のタダ捨てでした。△同玉に▲3四桂としばり、ほとんど受けが利かなくなります。8一の龍や5三の桂がよく利いています。
仕方のない△2三玉に、▲3四桂を決めてから▲6三歩成が手筋の成り捨てで、少しずつ後手の受けが難しくなっています。
以下、里見女流名人が危なげなく押し切りました。
本局も里見女流名人の快勝と言える内容で、防衛への視界良好です。
伊藤女流二段としても力が出なかった将棋でしたので、序中盤の研究をして次局に臨まれることでしょう。
戦型は相振り飛車になると予想します。
第44期女流名人五番勝負第3局
里見香奈(さとみ・かな)女流名人 対 伊藤沙恵(いとう・さえ)女流二段
2018年2月4日(日)
<関根名人記念館>千葉県野田市東宝珠花237-1
立会:富岡英作(とみおか・えいさく)八段
記録係:相川春香(あいかわ・はるか)女流初段
解説:長岡裕也(ながおか・ゆうや)五段
聞き手:鈴木環那(すずき・かんな)女流二段
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第44期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第3局(野田市Webページ)