里見香奈女流名人に上田初美女流三段が挑戦している第43期女流名人戦五番勝負。
第3局は84手で里見女流名人の勝ちとなりました。
シリーズ成績を1勝2敗とし、まずは1勝を返しました。
では、第3局を振り返りましょう。
第3局は上田女流三段の先手番です。
4手目△5四歩とゴキゲン中飛車を目指した里見女流名人に対して、上田女流三段は超速▲3七銀戦法を選びました。
戦型選択は第1局と同じですが後手の里見女流名人は銀対抗と少し変えてきます。先手は▲6六歩と角道を止めて持久戦志向です。
ここで△5六歩と突く手は、▲同歩△同飛▲5五歩と飛車の逃げ道を遮断され、プロ的には先手良しという結論になっています。
先手の持久戦志向を見て、後手は9筋の位を取りました。
通常であれば端の位を取ったら△8二玉と近づきたいものですが、▲8六銀と逆襲する手を見せられるのを気にしたと里見女流名人は言います。先手は▲8六銀と出れば▲7七角やいきなりの▲9五銀で逆襲できる駒組みになっていますね。そこで△4二金と振り飛車から見て左側の駒を使います。
ここで▲3七桂と△5三金を阻止する手段もあり、後手は駒組みに神経を使う展開となりました。
狙い通り9筋の位を逆襲した上田女流三段。代わりに玉の堅さを放棄しているので、形勢は微妙です。
9五の銀がそっぽなので、中央で戦いにしたい里見女流名人。△6五歩と突っかけてから△7二銀と美濃囲いを完成させ、中央からの殺到を狙います。
先手も9五の銀を▲8六銀と中央に活用して、戦いに備えます。
後手は金銀が重い形でしたが、△6五金~△5六金と中央でさばいて、だんだん駒がほぐれてきました。
飛車取りに▲6七金と当てられたところで、ひるまずに△5五銀とぶつけたの図の局面です。
こうなると後手の角筋も通ってくるので、先手の薄い陣形で支えきるのは大変。この辺りは後手好調の攻めです。
中央で角交換になり、後手の攻め駒がきれいにさばけました。
飛成を受ける▲5六歩はやむないところですが、△7五飛と切って攻めを継続します。
こうなると中央に使った▲7五銀すら逆用されている印象があります。勝ち将棋鬼の如しですね。
飛車を切ってからは△6六歩~△3九角が継続の攻めで、後手は駒損ながら4枚の攻めで切れることはありません。
まずは1勝を返して、巻き返しを見せた里見女流名人。
ひとつは落としましたが、引き続きカド番に追い込んでいる上田女流三段。
どちらが勝つか次局も注目ですね。
戦型予想は対抗形で、里見女流名人の三間飛車としてみます。
第43期女流名人戦五番勝負第4局
里見香奈(さとみ・かな)女流名人 対 上田初美(うえだ・はつみ)女流三段
2017年2月5日(日)
<湯原国際観光ホテル 菊之湯>岡山県真庭市湯原温泉16
立会・解説:福崎文吾(ふくさき・ぶんご)九段
記録係:相川春香(あいかわ・はるか)女流初段
聞き手:伊藤明日香(いとう・あすか)女流初段
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