9月28日(水)に第24期倉敷藤花戦挑戦者決定戦が行われました。
挑戦者決定戦に進出したのは、上田初美女流三段と室谷由紀女流二段です。
どちらが勝っても倉敷藤花戦初挑戦となります。
では、挑戦者決定戦を振り返りましょう。
振り駒の結果、上田女流三段の先手番となりました。
居飛車を指向する上田女流三段に対して、9筋の位を取ってから角道を開けたままの四間飛車に振った室谷女流二段。
さらに工夫が続き、通常であれば美濃囲いに組むところを金無双のような形に組んでいます。
8二の銀はカベ銀の悪形なので、この後どのように活用するのかが注目です。
駒組みが進み、後手の8二の銀が6四まで来ました。先手の方が見慣れているせいか、この辺りは先手が十分の駒組みに見えます。
図は2六の飛車を2八に引いたところです。
桂頭は銀が守っているので役目を交代したのですが、それでも△3五歩がありました。▲同歩は△3六歩があるので▲同銀ですが、△3八歩と垂らして動きを見せます。感想戦によると、この辺りは両対局者ともに自信がなかったそうです。
△3八歩とと金づくりを見せられては、先手も動くしかありません。▲6五歩と歩越しの銀に働きかけていきました。本譜は△同銀と取りましたが、この銀が7四~8五~9四と隅に追いやられては、3筋で挙げたポイントもかすんでしまいます。▲6五歩に対しては△7三銀と引くのが良かったそうで、確かに9四にいる銀より7三の方が玉の守りとしてよく働いています。
銀を追う過程で▲5六角と設置し、▲2三角成からの筋ができています。それを決行する前に自陣の整備をしてからというのが戦上手です。ところが、金の連結を良くした▲6八金上はあまり良くなかったそうで、△4八角と打たれてみると「景色が変わりました(室谷女流二段)」。桂取りを受けた▲2七飛が連続の疑問手で、「本譜は全然ダメになってしまいました」と上田女流三段のコメントが残っています。この辺りで形勢は後手に傾いていきます。
局面は角銀交換で先手の駒損ですが、龍を作っているのが主張です。後手の飛車は遊んでおり、龍で駒損を取り返せれば先手にもチャンスが出てきます。その望みを打ち砕くかのように、△3三角が決め手級の一手でした。どこに逃げても都合が悪く、仕方のない本譜の▲3一龍では遊んでいる飛車との交換で、先手にとって良い理屈がありません。
以下、薄い自玉に手入れしながら先手玉を寄せ切った室谷女流二段の勝ちとなりました。
室谷女流二段は、今春のマイナビ女子オープンに続き2度目のタイトル挑戦を決めました。
また、通算100勝目をタイトル挑戦で飾っています。
マイナビ女子オープンでは序盤で優位に立つことが多く、倉敷藤花戦でも新研究が見られることでしょう。とても楽しみです。
第24期倉敷藤花戦三番勝負日程
里見香奈(さとみ・かな)倉敷藤花 対 室谷由紀(むろや・ゆき)女流二段
第1局 11月8日(火) 東京都渋谷区「東京・将棋会館」
第2局 11月19日(土) 岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」
第3局 11月20日(日) 岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」