里見香奈倉敷藤花に伊藤沙恵女流二段が挑戦している第25期倉敷藤花戦三番勝負。第1局は170手で里見倉敷藤花の勝ちとなりました。防衛まであと1勝です。
では、第1局を振り返りましょう。
振り駒の結果、先手は伊藤女流二段に決まりました。
お互いに角道を開けあった後、3手目に▲9六歩△9四歩と端歩を打診するのは、相手の出方を伺った指し方で、振り飛車党同士の将棋で時折見られる駆け引きです。本局は相振り飛車になりました。
金無双の銀は端攻めに備えているというメリットもありますが、壁銀というデメリットもあります。伊藤女流二段は▲1七銀と使って後手の攻め駒をけん制し、それに呼応して里見倉敷藤花も△5四飛と中央に転戦しました。
後手は一度△4五銀と出たものの、▲4六歩から押し返されてしまいました。その代わりに△3三桂と桂を活用できたので、損得は難しいところです。
攻めの態勢が整ったところに対して、伊藤女流二段は▲3五歩と銀交換をめざしました。
通常であれば、攻めの銀と守りの銀の交換は攻め有利とされています。それを守りの方から交換を臨んでいった伊藤女流二段の真意はいかに。
先手は銀を手持ちにすることによって、後手の角を移動させ、▲3三角成と馬を作りながら桂馬を取って駒得を目指すのが狙いでした。
対して後手も△5九飛成と龍を作り、先手玉に迫ります。棋譜コメントによると里見倉敷藤花は「悪くないと思っていたようだ」とのことです。
ここで伊藤女流二段は▲4九金打と龍に当てながら自玉を固め、▲4三馬から攻めていきました。
後手は桂損の代償をどこに求めるか。里見倉敷藤花は△5八歩とと金づくりで取り返しにいきました。駒落ち定跡ではよく出てくる手段ですね。
対する▲5八同金寄にも、△3七歩▲同桂△6六歩と歩の手筋を駆使していきました。
ただ本局は、▲5八同金寄とさせたため感想戦で示された▲5九金寄が生じたり、▲3七同桂とさせたため▲4五桂が生じたりと、形勢は先手の方に振れてしまいました。
前図から形勢はもつれ、入玉もちらつく将棋になりました。入玉模様といえば、伊藤女流二段の得意分野。先手玉を上部に逃がしてしまうと捕まえづらくなるため手段がほしいところです。
里見倉敷藤花は△4四金とタダのところに捨てました。これが上部脱出を阻止する好手段で、▲4四同馬には△6五龍が玉を下段に落とす継続手。
以下、詰めろの連続で先手玉を追い込み、里見倉敷藤花が勝ち切りました。
倉敷藤花戦は三番勝負なので、里見倉敷藤花は早くも防衛にあと1勝となりました。
伊藤女流二段としては、序中盤優勢だっただけに、次の巻き返しに期待が高まります。
倉敷藤花戦は第3局が第2局の翌日という日程になっています。
戦型は、見たいという期待を込めてどちらかが居飛車にすると予想します。
第25期倉敷藤花戦三番勝負第2局
里見香奈(さとみ・かな)倉敷藤花 対 伊藤沙恵(いとう・さえ)女流二段
2017年11月26日(日)
<倉敷市芸文館>岡山県倉敷市中央1-18-1
立会:山田久美(やまだ・くみ)女流四段
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倉敷藤花戦中継