棋聖戦

第87期棋聖戦五番勝負第5局

羽生善治棋聖に永瀬拓矢六段が挑戦している第87期棋聖戦五番勝負。
第4局は86手で羽生棋聖の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2勝2敗とし、決着は最終局に持ち越されました。

では、第4局を振り返りましょう。

第87期棋聖戦五番勝負第4局-1

第4局は永瀬六段の先手番です。
羽生棋聖の2手目△8四歩に、永瀬六段は第2局と同様、矢倉を目指しました。
少し前の矢倉と言えば5手目▲6六歩が多かったのですが、最近では▲7七銀が多くなっています。それは後手が左美濃から急戦にする指し方が有力と見られているからで、A級順位戦▲森内△渡辺戦では飛車をタダで取らせて寄せきっています。

 

第87期棋聖戦五番勝負第4局-2

早囲い模様の先手に対して、後手の作戦は5筋交換型2枚銀でした。
この形はある将棋アプリで「中原流急戦」と呼ばれており、中央に手厚く、玉が薄い代わりに積極的な攻めでカバーするという特徴があります。
ちなみに本局とよく似た形が第54期棋聖戦第3局▲南芳一王将 対 △中原誠棋聖(肩書きは当時)で指されており、NHK将棋講座で取り上げられていました。

 

第87期棋聖戦五番勝負第4局-3

攻めの形を作った後手は、仕掛けるかと思いきや、じっと△1四歩と端歩を突きます。
これは将来の▲1五桂を消す受けの手でもあり、△1三角を作った攻めの手でもあります。
この手順を見て感じたのは、二枚落ちの二歩突っ切り定跡。その定跡は、攻めの形を作る、カニ囲いに囲う、端歩を突く、仕掛ける、という順番です。
本局の駒組み手順を見て、トッププロほど基本に忠実であると改めて思いました。

 

第87期棋聖戦五番勝負第4局-4

後手の攻め、先手の受け、という構図はくっきりしているものの、難解な中盤戦です。
感想戦コメントでも「いろいろありすぎて……何をやるんですかね(羽生棋聖)」、「指す手がわかりません(永瀬六段)」とあり、難解さがうかがえます。
実戦は図から▲4六歩△4五銀と食いちぎり、後手が攻め続ける展開になりました。

 

第87期棋聖戦五番勝負第4局-5

後手にやや分のある終盤戦で、△8六歩と手番を活かして攻める羽生棋聖。仕方のない▲8六同歩に△8七歩~△5七桂成がやはり基本に忠実な寄せで、後手好調の寄せです。
そこで▲4六銀と永瀬流の受けが出ましたが、以下いくばくもなく投了となりました。
では、後手快勝だったかというと微妙なところで、先手にも▲5三銀という手段があり、後手玉も危ないのです。その1手を渡さなかった羽生棋聖の寄せが素晴らしく、本質的には一手違いと言えそうです。

 
今期棋聖戦はフルセットとなり、盛り上がりはシリーズ最高潮です。
最終局は改めて振り駒となります。3局連続で後手が勝っているので、ここから注目かもしれません。
戦型は、羽生棋聖が先手なら横歩取り、永瀬六段が先手なら矢倉と予想します。
 
 
第87期棋聖戦五番勝負第5局
羽生善治(はぶ・よしはる)棋聖 対 永瀬拓矢(ながせ・たくや)六段
2016年8月1日(月)
9:00~
<高島屋>新潟県新潟市西蒲区岩室温泉678甲
立会:屋敷伸之(やしき・のぶゆき)九段
副立会:三浦弘行(みうら・ひろゆき)九段

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第87期棋聖戦 五番勝負 第5局 羽生善治棋聖 vs 永瀬拓矢六段
解説:阿久津主税(あくつ・ちから)八段
聞き手:中村桃子(なかむら・ももこ)女流初段

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