里見香奈女流名人に清水市代女流六段が挑戦する第42期女流名人戦五番勝負。
第2局は140手で里見女流名人の勝ちとなりました。
シリーズ成績を1勝1敗とし、改めての三番勝負です。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は清水女流六段の先手番です。
序盤に▲2五歩を決めたのを見て、里見女流名人は向かい飛車に構えました。
それに対して、清水女流六段は5筋位取りという、現代では珍しい作戦を採ります。
立会人の脇謙二八段は「5筋位取りは、対向かい飛車には相性がいいんですよ。」と、おっしゃっており、上手い作戦選択だったことがうかがえます。
巧妙に攻めの銀桂をさばいた清水女流六段。
こうなってみると、飛角の働きに差がついており、先手が指しやすい局面といえます。
里見女流名人としては、握っている手番を使ってどうするか?
実戦はじっと△4三歩でしたが、感想戦では△4六歩のほうが良かったかもしれないとのことでした。
▲4六同飛と取らせてから△4三歩と受ければ、先手の飛車を目標に技をかけやすいとのことでしょう。
居飛車が4筋を突破した手に対して、歩の連打から王手飛車をかけた里見女流名人。
連打で3歩使うなら、ひとつ上の局面図で△4六歩▲同飛と呼んでおけば1歩ですんだ計算になります。もっとも、王手飛車を避ける手段があったのでたらればの類になりますね。
清水女流六段としては、これでいけると踏んでいたようです。
俗に、王手飛車をかけたほうが負ける、と言いますが、本局はどう転ぶのでしょうか。
この少し前までは清水女流六段が良いと見られていましたが、隠居していた飛車が活躍しだして、怪しい雰囲気が漂っています。
里見女流名人が△7七銀打と打ち込んだ手に対して、実戦は▲同金と取りました。
控室の東八段は▲9八玉を指摘しており、うちのソフトはここで評価値を互角に戻しました。
後手が優勢か?と思われていた終盤戦の中、この局面は先手にチャンスが訪れていました。
その一手は、▲7四桂の歩頭桂です。
△7四同歩は▲6四角成で先手玉に余裕ができ、△7四同飛も▲7一角△7二玉に▲6三銀と打つ手が妙手で、速度を逆転させることができます。
清水女流六段は▲6三銀を「発見できませんでした」とおっしゃっていて、▲7四桂と合わせて発見して初めて指せる手なのでとても難易度の高い寄せでした。
実戦は▲9四桂と打ったために、後手優勢となり、そのまま里見女流名人が押し切りました。
これでタイスコアに戻した里見女流名人。
ただ、内容としては清水女流六段が押していたので、シリーズの行方はまだわかりません。
今回も次局までの間が1週間と短いので、どのような準備してくるのかも注目ですね。
戦型予想は対抗形、駆け引きがなければ里見女流名人の中飛車と予想します。
第42期女流名人戦五番勝負第3局
里見香奈(さとみ・かな)女流名人 対 清水市代(しみず・いちよ)女流六段
2016年1月31日(日)
9:00~
<関根名人記念館>千葉県野田市東宝珠花237-1 いちいのホール5F
立会・解説:田村康介(たむら・こうすけ)七段
聞き手:貞升南(さだます・みなみ)女流初段
記録係:相川春香(あいかわ・はるか)女流初段
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