羽生善治棋聖に豊島将之七段が挑戦している第86期棋聖戦五番勝負。
第2局は124手で豊島七段の勝ちとなりました。
シリーズ成績を1勝1敗とし、改めての三番勝負となりました。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は羽生棋聖の先手です。
豊島七段の2手目△8四歩に、羽生棋聖は▲6八銀と矢倉を指向しました。
現在、矢倉の先手番に課題が多いというのがプロ棋界の流れで、このタイミングでの▲3五歩に羽生棋聖の研究が垣間見えます。
ちなみに、▲6七金右と△7四歩が入った形は、「羽生の頭脳」で解説されています。
後手玉は位を張り、金銀がくっついていて、現代感覚の豊島七段らしい駒組みに見えます。
ただ、後手の右側は手薄で、羽生棋聖はそこを狙っていきます。▲5八飛~▲2八角と飛車のコビンを狙いますが、局後の感想によると、▲5八飛と回っている暇がなかったかも、とのこと。
しかし、図から▲2八角では飛車が働かないため、とても指しにくい一手ではあります。
銀損の代償にと金を作り、それを守るために打った6四の歩。その裏を取る△6六歩が、手筋ながら厳しい一手になりました。
羽生棋聖の選択は、▲6八銀。
手駒を使わせて、この交換は豊島七段のほうが得でしょう。
と、ここまで書いておいて、ソフトの評価値を見たら、互角とでました。
後手玉は堅く、銀得ですが、大駒の働きが悪いこと、5四の銀が取られそうなこと、と金ができていること、などを総合すると、互角と言われても同意できそうです。
桂馬が入れば△7六桂があり、自玉を固めつつ桂取りを催促する△3四銀が味のいい一手になりました。
仕方のない▲3三桂成に△同角と取り返した手が玉を睨む絶好のライン。
感想戦でも「少し足りないんですね」と、羽生棋聖はおっしゃっています。
後手優勢の終盤戦。
残り2分まで考えた豊島七段の選択は△6六歩。
この手を見た羽生棋聖は、脇息を引き寄せ上体を揺らしはじめました。
感想戦で「もう少しいい寄せがあれば」という感想を残している豊島七段。
ソフトも一瞬、互角に近い形勢判断をしました。
何かありそうという△6六歩でしたが、逆転には至らず、豊島七段が押し切りました。
名人戦に続き、後手番が連勝した今期の棋聖戦。
次局先手番の豊島七段の作戦選択は如何に。
自信のある居飛車の研究を持ってくるか、王座戦で見せた先手中飛車にするか。
いずれにせよ、楽しみな1局になりそうです。
第86期棋聖戦五番勝負第3局
羽生善治(はぶ・よしはる)棋聖 対 豊島将之(とよしま・まさゆき)七段
2015年7月4日(土)
9:00~
<沼津倶楽部>静岡県沼津市千本郷林1907
立会:木村一基(きむらかずき)八段
副立会:勝又清和(かつまたきよかず)六段
記録係:吉田正和(よしだまさかず)五段
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第86期棋聖戦 五番勝負第3局 羽生善治棋聖 vs 豊島将之七段
解説:飯島栄治(いいじまえいじ)七段
聞き手:竹部さゆり(たけべさゆり)女流三段