渡辺明棋王に羽生善治名人が挑戦していた第40期棋王戦五番勝負。
第3局は107手で渡辺棋王の勝ちとなりました。
渡辺棋王がシリーズ成績を3連勝とし、棋王を防衛しました。
では、第3局を振り返りましょう。
ちなみに、この将棋は現地解説会に行ってきました。
第3局は、渡辺棋王の先手です。
羽生名人の2手目△8四歩に対し、渡辺棋王は▲2六歩。
多くのプロ棋士が予想されていたように、本命の角換わりが登場しました。
一手前の▲2五歩を見て△6五歩と仕掛けるのが一つの流れとのこと。
△1二香が入った形なら、第62期王座戦第2局▲豊島△羽生戦があり、羽生名人も似た形を読んだことがある、と言えそうです。
この△7五歩で前例がなくなり、これが羽生名人の新手となります。
ただ、類似する局面では出ている手法なので、完全な新手と言えるかは微妙ですね。
現地大盤解説会では、ここで次の1手が出されました。
私は歩を取る手だと思って、▲7五同歩としましたが、正解は▲7五同角。
△3七角と打たせても馬は大したことがない、という発想はありませんでした。
歩を突き捨てて▲4七金と上がった手は「もともとの予定ではない」と、渡辺棋王。
それに対して、△8六歩~△7三桂と遊び駒を使った羽生名人。
自然な駒運びに見えましたが、「▲4六金と出させてしまったのが問題でした」と、羽生名人の感想が残っています。
この後、6六の角を起点とした攻めが厳しく、このあたりから先手がペースを握りました。
先手ペースの終盤戦。
駒割りが先手の金銀損ながら、飛車を成り、先手玉へ詰めろがかかりにくいためです。
後手の飛車が遊んでいるのも見逃せませんね。
ここは寄せの手が出るという雰囲気の中で指された▲5八桂は、会場からも意外という声が聞こえました。
大詰めの局面。
5筋の歩が切れた瞬間に▲5二歩と、巧みな歩使いです。
ところが、ここでは後手に上手い手があります。
△7八銀がその一手。
これは詰めろで、取れば△5六馬が王手龍取りになる仕組みです。
現地ではこの手は出ず、帰ってから聞いた話では、ニコニコ生放送でもソフトが指摘したといいます。
それを逃してからは、後手にチャンスは訪れませんでした。
ちなみに投了図の▲8二香もソフト指摘の手だったそうですが、現地では遠山五段が恥ずかしそうに指摘していました。
渡辺棋王が3連勝で防衛を決めました。
現地大盤解説の豊川七段によると、羽生名人が挑戦者でストレート負けしたのは今までにないと言います。
それほど渡辺棋王の指し回しが光ったと言えそうですね。
渡辺棋王はこの後、驚異的なスケジュールで話題になっています。
このまま好調を維持していくのか、注目ですね。
渡辺二冠、棋王防衛おめでとうございます!