羽生善治名人に行方尚史八段が挑戦している第73期名人戦七番勝負。
第4局は141手で羽生名人の勝ちとなりました。
シリーズ成績を3勝1敗とし、防衛まであと1勝としました。
では、第4局を振り返りましょう。
第4局は、羽生名人の先手番。
行方八段の2手目△8四歩に対し、▲6八銀と矢倉を指向しました。
第1局は早囲いでしたが、本局は脇システムと呼ばれる、角が向かい合う形に。
この△5三銀が最近の流行らしく、△7三銀なら先後同型になる可能性が高いでしょう。
後手の金を5二に置いているのがさりげない工夫で、角の打ち込みを消し、△7三桂と跳ねやすくなっています。
この辺りまでは似た前例があるそうで、今年1月に指された竜王戦▲羽生△谷川戦がそれです。
前例は▲2五歩に代えて▲1六歩でした。
この△6二飛は珍しい形ですが、角を交換して6筋の歩を伸ばせは、立派な攻めの形になります。
先手もそれを避けて▲6八角と、細かい駆け引きが続きます。
前図で引いた角を、再度ぶつけた羽生名人。
角の動きだけでいうと、▲4六角~▲6八角~▲4六角と手損です。
しかし、相手の△4三金右を見て角打ちのスキができたこと、後手の飛車が7二なので6筋の歩が伸びても良い、という判断ですね。
難しい指し手が続く中盤戦です。
図は63手目▲3七銀と指した局面。
この銀は▲2六銀~▲1五銀と出て、▲2六銀~▲3七銀と下がってきたものです。
棒銀に出て、うまくいかなかったから引いてくる。
理屈だけでいうととても簡単に思えますが、これを実戦で気持ちを切り替えて指せる羽生名人はやっぱり素晴らしい方だと思います。
入玉も視野に入り、 後手優勢の終盤戦。
羽生名人の▲1七銀に対して、△3八飛成と攻めに利く位置に逃げました。
ソフトの検討によると、▲1七銀までは後手800点台をつけていたのに、△3八飛成で一気に200点台の互角の評価に。
△2九飛成なら後手優勢を維持できていた、と、ソフトはいいます。
確かに、この後1七の銀が2六へと活用でき、入玉を食い止める要の駒になってしまったので、後手としてはそれを消すために飛車を2筋に利かしておくべきだったことが分かります。
ただ、対局者は全然違う感想で、「133手目までは負けかなと思っていた」という、羽生名人の感想が残っています。
苦しい将棋を逆転勝ちした羽生名人が3勝目を挙げ、防衛に王手をかけました。
また、今シリーズ初の先手番勝利でもありました。
次局は行方八段の先手番ですので、是が非でも勝って次につなげたいところ。
戦型予想は、角換わり、としてみます。
第73期名人戦七番勝負第5局
羽生善治(はぶ・よしはる)名人 対 行方尚史(なめかたひさし)八段
2015年5月28・29日(木・金)
9:00~
<アゴーラ福岡山の上ホテル&スパ>福岡県福岡市中央区輝国1-1-33
立会:深浦康市(ふかうら・こういち)九段
毎日副立会:豊川孝弘(とよかわ・たかひろ)七段
朝日副立会:佐藤天彦(さとう・あまひこ)八段
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第73期名人戦七番勝負 第5局 初日 羽生善治名人 vs 行方尚史八段
解説:飯塚祐紀(いいづか・ひろき)七段 聞き手:室田伊緒(むろた・いお)女流二段
第73期名人戦七番勝負 第5局 2日目 羽生善治名人 vs 行方尚史八段
解説:阿久津主税(あくつ・ちから)八段 聞き手:本田小百合(ほんだ・さゆり)女流三段