加藤桃子女流王座に伊藤沙恵女流二段が挑戦している第5期女流王座戦五番勝負。
第3局は284手で持将棋となりました。
シリーズ成績は、1勝1敗1持将棋です。
では、第3局を振り返りましょう。
第3局は伊藤女流二段の先手番です。
いつもは力戦調の矢倉を指す伊藤女流二段ですが、本局は定跡形と言って良いでしょう。
銀も参加する雀刺しは数年前に流行っており、前期王位戦第1局も似たような将棋になりました。ちなみにその将棋は後手から先攻する展開でした。
類型との違いは、▲1七香か▲1六香。
そういえば以前、渡辺竜王が▲1六香として雀刺しにする将棋を見た記憶があります。
▲1七香ではなく、▲1六香とした違いがここで現れました。
もし▲1七香であれば、△1七馬と取られてしまいます。
この変化の時に▲1六香のほうが良いという意味でした。
先手は飛車損ながら、後手玉の近くを破り、自玉が安全なので、十分バランスが取れています。
加藤女流王座も端から反撃し、攻め合いに活路を見出します。
その中で放たれた▲4一銀。しばりの一手です。
これには加藤女流王座も「ほどき方が難しい」という感想を残しています。
△9六桂から攻防の飛車を打てば2四の角が抜けますが、それには好手順があって後手玉が寄るといいます。
詳しくは中継棋譜コメントに譲ります。
一時の飛車損から考えれば、ずいぶんと駒損を取り返した先手。挟撃体制もできており、形勢は先手が良いです。
加藤女流王座は歩頭に銀を打って、あわよくば上部脱出を狙います。
この△3四銀がいい粘りで、「全然わからなくなってしまいました」と、伊藤女流二段。
本譜は▲2三銀不成としたため、後手玉を捕まえ損ねてしまいました。
捕まえ損ねると上部脱出されてしまいやすいのが、矢倉の特徴のひとつでもあります。
本局はお互いに上部脱出を図り、相入玉の様相を呈してきました。
相入玉になれば、大駒は5点、小駒は1点と計算します。
図では△6一金と打てば角が取れるため、差し引き4点を得ることができて、後手が良かったそうです。
終局後の感想では、伊藤女流二段も点数を勘違いしていたと明かしており、入玉将棋の難しさを感じてしまいます。
以下、お互いに規定の24点に達していたため、持将棋となりました。
この持将棋によって、第6局が年明けに予定されることとなりました。
観る方としては、単純に多く将棋を見たいのでぜひそこまで行ってほしいと思います。
次局も伊藤女流二段が矢倉模様を目指すことでしょうから、戦型は加藤女流王座次第と言えそうです。
第5期女流王座戦五番勝負第4局
加藤桃子(かとう・ももこ)女流王座 対 伊藤沙恵(いとう・さえ)女流二段
2015年12月11日(金)
10:00~
<東京将棋会館>東京都渋谷区千駄ヶ谷2-39-9
立会:田中寅彦(たなか・とらひこ)九段
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