女流名人戦

第42期女流名人戦五番勝負第4局

里見香奈女流名人に清水市代女流六段が挑戦する第42期女流名人戦五番勝負。
第3局は111手で里見女流名人の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2勝1敗とし、防衛まであと1勝としました。

では、第3局を振り返りましょう。

第42期女流名人戦五番勝負第3局-1

第3局は里見女流名人の先手番です。
▲7六歩△8四歩▲5六歩から、中飛車に構えました。この手順で清水女流六段に連敗をしているので、新研究がありそうです。
端の突き合いを見て角道を止めた先手に対して、後手の清水女流六段は、金を繰り出していきました。
これは「金立ち戦法」とも呼ばれ、升田幸三実力制第4代名人の有名な自陣飛車「▲3八飛打」も、この戦法でした。

 

第42期女流名人戦五番勝負第3局-2

7筋に備えられたら5筋に転戦できるのが、金ならではの柔軟性です。
「拠点に飛車を振れ」の格言通り、5筋に飛車を回った里見女流名人。この一手には74分を費やしています。持ち時間は3時間ですから、大長考の部類に入りますね。
それほど深く研究している戦型でもないと思われますので、慎重になっていることがうかがえます。

 

第42期女流名人戦五番勝負第3局-3

居飛車が1筋から仕掛けてきたのに対して、端は大丈夫と見た里見女流名人は手抜きで▲4五桂と跳ねました。
それなら、取り込んでみたいと思うのがアマチュア的発想ですが、感想戦で清水女流六段は「危ないと思っていた」といいます。里見女流名人の読みは△1六歩に対して▲7三桂成から攻めていくというものでしたが、その後の手が難しいとのことで、激戦といえます。
ここでは、Twitter解説の高見泰地五段が指摘していた△6五桂▲同歩△7五銀が有力で、うちのソフトもその筋で形勢互角と判断していました。

 

 

第42期女流名人戦五番勝負第3局-4

美濃崩しの基本手筋といえば、△2四桂もそのひとつ。△1六桂打が入れば、先手玉は危なくなります。
そこで「桂頭の銀定跡なり」の格言に基づいて、里見女流名人は▲2五銀と受けました。
続く△3三桂はよくある指し方ですが、それに対して▲3四銀とかわすのが面白い指し方でした。
△1六桂打は大丈夫との読みですね。

 

第42期女流名人戦五番勝負第3局-5

先手がやや優勢で突入した終盤戦。後手の△1六桂打が入って、先手玉も危険が迫っています。
後手の手番でどうするかですが、実戦は△3七歩とたたきました。玉の側にある金銀をはがすのは寄せの基本ですね。
ところが、これを手抜いて攻め合われると、どうも先手の攻めのほうが速いのです。
ここは△6六金が最後の勝負手だったそうで、2二の角が6六へ飛び出せれば寄り形が見えてきます。ただ、そっぽの6七銀を相手にするので、感覚的にはやりにくい手とはいえそうです。

 
激戦を制し、里見女流名人が防衛に王手をかけました。
ここまで見ごたえのある将棋ばかりで、シリーズが盛り上がっています。次の一局も見逃せないですね。
戦型予想は、対抗形と見て良いでしょう。里見女流名人が中飛車に振るのが大本命です。
 
 
第42期女流名人戦五番勝負第4局
里見香奈(さとみ・かな)女流名人 対 清水市代(しみず・いちよ)女流六段
2016年2月14日(日)
9:00~
<湯原国際観光ホテル 菊之湯>岡山県真庭市湯原温泉16
立会:福崎文吾(ふくさき・ぶんご)九段
聞き手:伊藤明日香(いとう・あすか)女流初段

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