棋王戦

第40期棋王戦の挑戦者は羽生善治名人

12月22日(月)に行われた第40期棋王戦挑戦者決定戦二番勝負第1局。
第1局は185手で先手の羽生善治名人が勝ちました。
これにより、棋王戦の挑戦者は羽生名人となりました。

では、挑戦者決定戦を振り返りましょう。

第40期棋王戦挑戦者決定戦二番勝負第1局-1

振り駒の結果、羽生名人が先手になりました。
深浦九段の2手目△8四歩に対して、▲2六歩と角換わりへ。
よくある定跡形、と思いきや、すでに深浦九段の工夫が出ています。
よくある実戦例は、この局面で△7四歩が突いてある形ですが、深浦九段は右の金を△4三金右~△4二金引とすることで、それを省きました。
飛車のコビンが開いていないほうが、後手に取ってプラスになるという考え方です。
手損の概念もずいぶんと変わった印象がありますね。

第40期棋王戦挑戦者決定戦二番勝負第1局-2

後手は穴熊に組み、先手からの攻めを待ちます。
ちなみに、うちのソフトによると△1一玉が敗着という評価をしていてびっくりしました。
もちろん羽生名人は仕掛け、激しい戦いに。
この▲3四銀打ちでは▲3四歩という手もあり、羽生名人いわく「▲3四銀打がおかしかったのか」。

第40期棋王戦挑戦者決定戦二番勝負第1局-3

局面は先手の金得ながら、▲5六銀と▲5八金が働きの弱い駒になっているので、形勢は後手良し。
数の攻めに、数の受けで桂馬を打つしかありませんが、羽生名人の選択は7九でした。
局後「9九でしたね」と、羽生名人。
玉の逃げ道を考えると、9九から打つほうが広い、というわけです。
ところが、ソフトによると▲7九桂が良いといいます。
この瞬間だけで考えると、9九より7九のほうが桂馬は働いています。
将来の逃げ道を考える人間と、その場その場の再現を追及するソフトの違いがくっきり表れた局面でした。

第40期棋王戦挑戦者決定戦二番勝負第1局-4

深浦九段は、先手の玉頭に飛・香・香の三段ロケットを設置しました。
この時に体をかわすような受けができないのが、▲7九桂の罪。
そこで、「本当は打ちたくなかった」▲7五桂から、ロケットを除去しに行った羽生名人。
こういう柔軟な思考は、羽生名人ならでは。
ソフトはこのあたりから、後手有利だった評価値を互角に戻しています。

第40期棋王戦挑戦者決定戦二番勝負第1局-5

 
玉頭攻めを▲7七玉とかわし、小康を得た先手は、▲4六桂と反撃開始。
この桂馬が▲3四桂~▲2二桂成と成り込み、相手玉を捕まえる重要な駒になるのです。
実に上手い桂の使い方で、さすがは羽生名人です。

羽生名人の棋王戦登場は、7期ぶり。
王将戦も挑戦者の目が残っており、渡辺二冠との12番勝負が実現する可能性があります。
棋王戦五番勝負は2月11日(水)から開幕します。
現代のゴールデンカードと言っても過言ではない二人の番勝負、実に楽しみです。

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