竜王戦

第29期竜王戦七番勝負第5局

渡辺明竜王に丸山忠久九段が挑戦している第29期竜王戦七番勝負。
第4局は101手で渡辺竜王の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2勝2敗とし、タイスコアになりました。

では、第4局を振り返りましょう。

第29期竜王戦七番勝負第4局-1

第4局は渡辺竜王の先手番です。初手▲7六歩から居飛車を目指したのに対して、丸山九段は4手目△8八角成から得意の一手損角換わりへ誘導します。
後手陣はとても珍しい形をしており、△6二飛、△7二金はもちろんのこと、△4四銀と2枚の銀を歩越しに出る手も組み合わせるのはほとんど見たことがありません。
ここからの後手の構想が見どころです。

 

第29期竜王戦七番勝負第4局-2

丸山九段は持ち駒の角を設置して、攻め駒を6筋に集中させました。こうなると攻めに迫力があって、先手も怖いところです。
総攻撃を仕掛けるなら△9五歩と端の突き捨てを入れるのが居飛車の常套手段ですが、結果的には先手玉の逃げ道を広げてしまったと丸山九段が悔やんだ手となりました。以下の進行を見ると確かにその通りなのです。
しかし、この段階でトッププロが見通せないのですから結果論と言えそうですね。

 

第29期竜王戦七番勝負第4局-3

丸山九段は中央で銀交換をして、△5五同角と角を飛び出し、そして、△7七角成と切り落としました。角桂交換の駒損で、アマチュアが指せば暴発と見られそうな攻めです。
続く△8五桂打と持ち駒の桂を打つのがなかなか発見しづらい手で、これで取り返せるという読みですね。
△7七角成には1時間36分の長考でしたので、かなり先まで読まれていることがわかります。

 

第29期竜王戦七番勝負第4局-4

駒損の攻めを敢行した後手は、攻めが止まると苦しくなります。現局面では▲角桂△金銀の交換でずいぶんと取り返しました。
この局面は9筋の突き捨てがないほうが良いと分かる局面で、もしそれがなければ△6六飛と切って寄り筋。本譜でそれをやると、▲9六玉と逃げるスペースがあるため、無理筋となります。
実戦は泣く泣く△5五飛でしたが、▲8九桂と先受けされ、続く▲5六金が丸山九段の見えなかった好手段で、先手に傾いていったようです。

 

第29期竜王戦七番勝負第4局-5

局面は先手優勢の終盤戦です。9六の逃げ道があることも先手良しの理由のひとつです。渡辺竜王は▲5一角と決めに行きました。感想戦では危険とされたようで、後手にも勝負手が発生していたといいます。他の手と言っても難しく、15手以上先の局面を読み切らなくては指せない局面とのことで、「読みきるのは人間技ではないでしょう」と渡辺竜王のコメントが残っています。ちなみにうちのソフトに聞いてみたら、87手目の▲同角成に変えて▲6四歩の方が良いと言ってますが、こちらの変化も難しく、やはり読み切るのは人間技ではなさそうです。

 
丸山九段得意の一手損角換わりを制した渡辺竜王。シリーズ成績をタイに戻し、とりあえずホッとされていることでしょう。
丸山九段の新構想は今回は実を結びませんでしたが、また新たな研究を加えてどこかで出てくるのかも楽しみです。
次局の戦型予想は、渡辺竜王が2回連続振り飛車を採用しないと読み、角換わりとしてみます。
 
 
第29期竜王戦七番勝負第5局
渡辺明(わたなべ・あきら)竜王 対 丸山忠久(まるやま・ただひさ)九段
2016年12月1・2日(木・金)
<HAKODATE 海峡の風>北海道函館市湯川町1-18-15
立会:屋敷伸之(やしき・のぶゆき)九段
解説:阿久津主税(あくつ・ちから)八段
記録係:梶浦宏孝(かじうら・ひろたか)四段

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第29期竜王戦 七番勝負 第5局初日 渡辺明竜王 vs 丸山忠久九段
解説:神谷広志(かみや・ひろし)八段
聞き手:竹部さゆり(たけべ・さゆり)女流三段

第29期竜王戦 七番勝負 第5局2日目 渡辺明竜王 vs 丸山忠久九段
解説:田中寅彦(たなか・とらひこ)九段
聞き手:中村桃子(なかむら・ももこ)女流初段

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