渡辺明竜王に丸山忠久九段が挑戦している第29期竜王戦七番勝負。
第1局は68手で渡辺竜王の勝ちとなりました。
では、第1局を振り返りましょう。
振り駒の結果、丸山九段の先手番となりました。
丸山九段と言えば、角換わりのスペシャリスト。渡辺竜王の2手目△8四歩に角換わりを目指しました。
最近は▲3七桂を急ぐ将棋が流行っているそうですが、▲4五桂まで急ぐのは珍しいです。
1筋の突き合いがあれば同一局面があり、本局の3日前に指されています。その将棋の後手番は他ならぬ渡辺竜王で、対策はいかに。
渡辺竜王の答えは△4二角でした。5三のマス目を強化しながら飛車取りに当て、手番を握って△4四歩から桂を取りに行く狙いです。前例も先手が桂損しましたが、馬ができ、後手の陣形が悪かったのですが、これならそれらがないので、こちらの手順が勝ることがわかります。△4二角に対して飛車を引くようでは△4四歩が間に合うので、先手としては▲3四飛と横歩を取って攻めを継続します。
1日目から飛車を切る激しい展開になりました。▲2二歩~▲4一金と打って攻めを継続しますが、控室の見解は「先手の攻めが切れ模様」。うちのソフトもここでは後手に大きく振れています。感想戦では飛車を切らない手順も検討され、こちらの方が先手としては良かったようです。対する渡辺竜王は△2四角と逃げて駒得を重視する指し方を選びました。変えて△3七歩も有力で、▲4二金△同金は手順に金が後手玉に近づくので味が良いですね。こちらは駒の働きや玉の堅さを重視する指し方になります。
丸山九段の右桂は天使の跳躍で5三までたどり着きました。取ってくれれば▲3一角があるので攻めがつながります。しかし、放置して△5六歩と玉のコビンを攻められると、意外にも継続手が難しいです。▲5二成桂は△同飛でお手伝いなので実戦は▲6三成桂と銀を取りましたが、「▲6三成桂で悪くした」と感想戦で丸山九段はおっしゃっています。代わる手として▲6六銀が挙げられ、これで上部やコビンを強化すれば本譜より良かったといいます。
局面は後手が指しやすい終盤戦です。ノータイムでたたいた△3七歩が手筋の一着で、金銀の連携を崩し、飛車打ちを効果的にしています。実戦は2時間20分の大長考で▲4七銀とかわしましたが、続く△6九飛が金桂の両取りで技ありです。ちなみに△6九飛に代えて△2九飛もあったそうですが、「△6九飛のほうが桂が取れるので厳しいかなと思った」と渡辺竜王の感想が残っています。38手目に角を逃げたことを合わせると、渡辺竜王は駒の損得を重視していると考えられそうです。
3日前の前例に新研究を加えて修正案を示してきた渡辺竜王。
昔からこのような例は数多くあり、本当に厳しい世界だと感じさせられます。
次局は丸山九段が後手番ですので、戦型予想の本命は一手損角換わりです。
もしかしたら横歩取りもあるかもしれません。
第29期竜王戦七番勝負第2局
渡辺明(わたなべ・あきら)竜王 対 丸山忠久(まるやま・ただひさ)九段
2016年10月27・28日(木・金)
<箱根ホテル小涌園>神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1297
立会:森内俊之(もりうち・としゆき)九段
解説:鈴木大介(すずき・だいすけ)八段
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第29期竜王戦 七番勝負 第2局初日 渡辺明竜王 vs 丸山忠久九段
解説:田丸昇(たまる・のぼる)九段
聞き手:山田久美(やまだ・くみ)女流四段
第29期竜王戦 七番勝負 第2局2日目 渡辺明竜王 vs 丸山忠久九段
解説:北浜健介(きたはま・けんすけ)八段
聞き手:安食総子(あじき・ふさこ)女流初段