マイナビ女子オープン

第9期マイナビ女子オープン五番勝負第4局

加藤桃子女王に室谷由紀女流二段が挑戦している第9期マイナビ女子オープン五番勝負。
第3局は114手で加藤女王の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2勝1敗とし、防衛まであと1勝としました。

では、第3局を振り返りましょう。

第9期マイナビ女子オープン五番勝負第3局-1

第3局は室谷女流二段の先手番です。
中飛車模様の出だしから向かい飛車に振り、第1局と同じ戦型になりました。第1局では▲4六歩△4二銀上を入れてからの▲5七銀だったので後手は舟囲いの薄い陣形を余儀なくされました。本局はそれがないので、後手の加藤女王は左美濃の堅陣に組んでいます。
その違いがどう出るか注目です。

 

第9期マイナビ女子オープン五番勝負第3局-2

左美濃は△4二銀型の舟囲いに比べて堅さは勝りますが、中央の厚さは劣ります。そこを狙って▲5八飛から中央を攻める構想があるので、前図で▲4六歩と左美濃をけん制しなくても良いという判断なのでしょう。なるほどの構想です。
先手が8筋を受けなかったので、後手は△8九角と応戦します。ところが、局後のインタビューでこの辺りの戦い方に誤算があったと加藤女王は明かしています。

 

第9期マイナビ女子オープン五番勝負第3局-3

8筋は破られましたが、中央から取り返して先手十分の局面です。
現局面は6八の金がタダ。しかし、△6八龍と取ると▲9五角と打たれてしびれます。この▲9五角を「うっかりした」という加藤女王。
そして選んだ指し手は、△4二金~△8一龍。
両取りの筋を消し、僻地のと金を払いました。その心理状態でよく辛抱の手順を指せるものです。

 

第9期マイナビ女子オープン五番勝負第3局-4

銀取りに△6五歩と突いて、馬の利きを通した加藤女王。
銀をどうするかという局面で室谷女流二段の選択は▲7七銀でした。ひと目、そっぽに行くので、相当な読みがないと指しづらいですね。
感想戦のコメントによると、「▲5七銀は質駒になるのかと思って」とのことです。
ちなみにうちのソフトの評価値は800点台で先手良しと出ました。

 

第9期マイナビ女子オープン五番勝負第3局-5

7七の銀の働きはイマイチですが、現実の金得が大きく、やや先手優勢の終盤戦です。
加藤女王も駒を3筋に集めて、最後のチャンスに勝負をかけます。5五の馬は、8九~9八~9七~6四と来て、ついに天王山へ。形勢が苦しくとも駒の働きを良くしてチャンスを待つ姿勢はアマチュアにも参考になります。
最後に一瞬来たチャンスをとらえて、加藤女王が逆転に成功、そのまま押し切りました。

 
苦しい将棋をひっくり返して2勝目を挙げた加藤女王。インタビューでは「調整して」とおっしゃっており、課題を残した将棋ととらえているようです。
カド番に追い込まれていますが、「3局とも苦しい将棋」と加藤女王にいわしめた室谷女流二段。第4局も熱戦が期待できそうです。
今シリーズ、すべて後手番が勝っているので、順番に行くと……勝負はふたを開けてみないと分かりませんね。
戦型予想は、室谷女流二段の振り飛車が濃厚で、見たいという希望を込めて角道を止めるタイプの将棋と予想します。

第9期マイナビ女子オープン五番勝負第4局
加藤桃子(かとう・ももこ)女王 対 室谷由紀(むろや・ゆき)女流二段
2016年5月18日(木)
10:00~
<将棋会館>東京都渋谷区千駄ヶ谷2-39-9
立会:深浦康市(ふかうら・こういち)九段

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