加藤桃子女王に室谷由紀女流二段が挑戦している第9期マイナビ女子オープン五番勝負。
第2局は104手で室谷女流二段の勝ちとなりました。
シリーズ成績を1勝1敗とし、タイスコアとなりました。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は加藤女王の先手番です。
初手▲2六歩や早いタイミングの▲6八玉に、室谷女流二段の振り飛車を強く意識していることが感じられます。
対する室谷女流二段は、最近では珍しい角道を止める中飛車にしました。
少しタイミングの早い△4五歩が工夫の一手で、前例では美濃囲いに囲ってからが多いそうです。
角道を止める中飛車がプロ間で減った理由として、居飛車穴熊の台頭が挙げられます。穴熊に組みたい加藤女王、組ませる前に動きたい室谷女流二段の構図です。
先手はじっとしていると△3五歩から石田流のように構えられ、手も足も出なくなります。そこで▲2四歩と仕掛けていったわけですが、「やりすぎてしまいました」と、加藤女王の感想が残っています。
自然な対応で後手良しに導いた、室谷女流二段。
本局でも「振り飛車の命」と形容される左桂を気持ちよくさばいていきます。この辺りの指し回しは振り飛車のお手本になる手順で、何度並べても気持ちが良いです。
こうなると、先手の右桂が使えていないので、後手が指しやすいことがはっきりしてきます。
Twitter解説の門倉啓太四段が「印象に残った手」として挙げていたのが、△4五飛と図の△6五角です。△4五飛は、3三の桂馬を生かして△2五飛とぶつける含みがありますし、この△6五角は△5六歩と取り込む攻めと、遠く2一のマス目に利かし、飛車を好位置に成られないようにしています。
局面は後手が駒得で、玉が堅く、後手優勢です。
今放たれた△3五角が攻防の要所で、攻めては△6八角成を、守っては美濃囲いの急所である7一の地点に数を足しています。
俗に「二枚飛車に追われる夢を見た」と言いますが、△3五角の利きが素晴らしく、きっちり1手勝ちを見切って室谷女流二段が押し切りました。
前局の逆転負けを吹き飛ばすような快勝で、「マイナビ女子オープンを盛り上げることができてホッとしている」と、局後のインタビューに答えている室谷女流二段です。
一方の加藤女王は「本局が、たくさん反省点があるので……」と答えており、巻き返しにも期待ですね。
次局はYouTubeで独占生中継されることが発表となっており、対局時刻も12時からといつもと違う時間になっています。
新しい試みでどんなことが起こるかわかりませんが、新しい形を模索する姿勢はファンにとってとてもありがたいことです。
ぜひ成功することを、また熱戦になることを祈っております。
第9期マイナビ女子オープン五番勝負第3局
加藤桃子(かとう・ももこ)女王 対 室谷由紀(むろや・ゆき)女流二段
2016年5月9日(月)
12:00~
<YouTube space Tokyo> 東京都港区六本木6-10-1
立会:森下卓(もりした・たく)九段
記録:伊藤沙恵(いとう・さえ)女流二段
本局限定生中継はこちら
第9期マイナビ女子オープン五番勝負第3局独占生中継!(YouTube)
解説者:野月浩貴(のづき・ひろたか)七段 西尾明(にしお・あきら)六段
聞き手:山口恵梨子(やまぐち・えりこ)女流初段
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マイナビ女子オープン in 将棋情報局
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第9期マイナビ女子オープンイベント情報 (日本将棋連盟)