羽生善治名人に佐藤天彦八段が挑戦している第74期名人戦七番勝負。
第2局は159手で佐藤八段の勝ちとなりました。
シリーズ成績を1勝1敗とし、タイスコアに戻しました。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は佐藤八段の先手番です。
羽生名人の2手目△8四歩に▲6八銀から矢倉を目指しました。佐藤八段といえば角換わり、というイメージがあり、プロ棋士の間でも意外に感じた方が多かったようです。
早囲いから早めに▲4六銀と上がる手法は今期A級順位戦でも現れた指し方で、後手が黙っていると▲3七桂と攻めの理想形に組み、金矢倉に囲ってから総攻撃を仕掛けるという展開になります。
先手の理想形は許せないと△4五歩から反発した羽生名人。それを争点にして戦いのきっかけをつかもうとする佐藤八段。虚々実々の戦いです。
封じ手の▲4八銀は3七から引いたものです。角を引く余地を作り、銀を立て直す狙いがあり、佐藤八段らしい柔らかい駒運びという印象があります。
4筋の折衝で桂得を果たした羽生名人。
しかし、それで後手良しかと言われるとそうでもありません。
理由としては、先手の馬が強力なこと、後手の8一の桂馬が遊んでいることが挙げられます。
それをなんとかすべく羽生名人の組み立てた手順は、△5三金~△7二角と馬を消すものでした。
馬は消えましたが、その代償として囲いの金が離れたので、先手としてはそれを活かしたいところです。
佐藤八段は手持ちの角を再度馬にして攻め込みました。馬が活躍する展開になると先手が良くなります。
そこで後手としては馬を追うことになりますが、図の△7一桂は読みの入った一手でした。図から▲7二金△9二飛▲5三馬△同銀▲8三銀という狙いがあり、7一の桂が▲8三銀を消しています。
前図の△7一桂が、△6三桂~△5五桂と攻め駒に早変わりし、駒の損得は後手の銀得になっています。後手が良さそうですが、まだまだ大差と言うわけでもありません。
駒損している先手としては攻めて取り返しに行きたいところ、と考えてるのが一般的ですが、佐藤八段の選択は▲8八玉。
この早逃げで先手玉は相当寄らなくなりました。さらに最終盤でも▲9八玉の早逃げがあり、佐藤八段らしい手が出ています。
先手玉に詰みもあったようですが、大熱戦の末、佐藤八段が勝ち切りました。
次局は羽生名人が先手番ですので、後手番の佐藤八段が横歩取りに誘導するのが大本命です。しかし、本局の作戦選択をみると佐藤八段もいろいろ用意していることがうかがえますので、後手番でも矢倉や角換わりをするかもしれません。あとは、羽生名人が3手目▲6六歩と変化して相振り飛車になる、というのも見てみたい気がします。
第74期名人戦七番勝負第3局
羽生善治(はぶ・よしはる)名人 対 佐藤天彦(さとう・あまひこ)八段
2016年5月12・13日(木・金)
9:00~
<城山観光ホテル>鹿児島県鹿児島市新照院町41-1
立会:深浦康市(ふかうら・こういち)九段
朝日副立会:木村一基(きむら・かずき)八段
毎日副立会:豊川孝弘(とよかわ・たかひろ)七段
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第74期名人戦七番勝負 第3局 初日 羽生善治名人 vs 佐藤天彦八段
解説:富岡英作(とみおか・えいさく)八段
聞き手:安食総子(あじき・ふさこ)女流初段
第74期名人戦七番勝負 第3局 2日目 羽生善治名人 vs 佐藤天彦八段
解説:三浦弘行(みうら・ひろゆき)九段
聞き手:中村桃子(なかむら・ももこ)女流初段