里見香奈女流王座に加藤桃子女王が挑戦している第7期女流王座戦五番勝負。
第2局は113手で加藤女王の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2連勝とし、復位まであと1勝としました。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は加藤女王の先手番です。初手▲2六歩~▲2五歩と形を決めました。
ここから後手がゴキゲン中飛車を目指すと銀対抗の形になりやすいため、加藤女王としては研究を絞りやすい意味があります。
▲6五歩~▲6六金が守りの金を進出する手なので意外な構想ですが、新聞解説の山崎隆之八段が過去にNHK杯で似たような構想を指されています。当時の観戦記によると「▲7八飛、▲7五歩の狙いで、後手の角道を止め、△8五桂からの攻めを緩和する意味です」と、あります。
7筋の桂頭攻めに対し、角金交換を甘受し、手厚く△7五金と打った里見女流王座。
駒の損得だけ見れば先手が得ですが、守りの金を交換したので玉が薄くなっています。また「相穴熊は角より金銀」という格言もあり(渡辺流勝利の格言ジャッジメントより)、穴熊は金駒の方が価値が高いケースも考えられます。このあたり形勢は互角ながら、ソフトの評価値はわずかに後手に振れています。
前図より▲7八飛△5六歩▲同歩△6五金と進みました。
感想戦によると、里見女流王座は△6五金に変えて△5六同飛を本線として読んでいたそうです。その後▲5七歩と一回受けられてから▲3五歩の桂頭攻めを気にして、予定を変更したとのことです。
ただ、突き捨ててから金寄りだったため▲5五歩の変化が生じてしまったのが後手にとってつらいところ。同じ金寄りなら5筋の突き捨てを入れないほうが良かった可能性があります。
先手は▲2六角と働きの弱かった角を味良く活用して攻めの態勢を整えます。
そこで里見女流王座はじっと△1四歩。手渡しです。意味としては▲1五角を消しており、△4五銀や△4五桂がやりやすくなっています。
手を渡された加藤女王は16分の考慮で▲6二歩。ニコニコ生放送の佐藤和俊六段は「いい反応」と評しています。感想戦で加藤女王は△6二同金を気にしており、自信を持って打った歩ではなかったようです。
局面は進み、右辺で馬を作り、▲2四歩から確実な攻めがあるため、形勢は先手持ちの終盤戦です。
図は2六の角を4八へ引いたところ。先手の角は2六では2枚の駒で利きを遮られているので、活用するにはそれを退かすか、別のラインで使う選択肢があります。
本局は4八に引くことで一気に後手玉の近くに利くようになり、効果は歴然。8四に駒を打つ含みもでき、評判が良かったと感想戦で加藤女王に伝えられました。
加藤女王が連勝し、復位まであと1勝です。
カド番に追い込まれた里見女流王座ですが、次局も意地の中飛車でシリーズを盛り上げていただけたらと思います。
第7期女流王座戦五番勝負第3局
里見香奈(さとみ・かな)女流王座 対 加藤桃子(かとう・ももこ)女王
2017年11月22日(水)
<浮月楼>静岡県静岡市葵区紺屋町11-1
立会:広瀬章人(ひろせ・あきひと)八段
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第7期女流王座戦 第3局 里見香奈女流王座 vs 加藤桃子女王 五番勝負
解 説:戸辺誠(とべ・まこと)七段
聞き手:貞升南(さだます・みなみ)女流初段