羽生善治王位に木村一基八段が挑戦している第57期王位戦七番勝負。
第2局は106手で羽生王位の勝ちとなりました。
シリーズ成績を1勝1敗とし、タイスコアに戻しています。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は木村八段の先手番です。
羽生王位の2手目△8四歩に、矢倉を目指しました。最近の矢倉は先手の方が工夫を求めれられていて、本局は早囲い+棒銀です。
▲3五歩△同歩と突き捨ててから▲2六銀は電王戦でのGPS新手のようなイメージですね。その新手は歩が回収できないように見えるので人間にはやりづらいという話を聞いたことがありますが、この場合は先手も1歩持っているのでやりやすい意味があります。
▲3五歩の突っかけからやり取りの末、局面が落ち着きました。
後手陣は変わらないものの、先手陣は▲3七角・▲4六銀の形になっています。一般的に先手のその形は愚形とされているので、このやりとりは後手がわずかに得したと言えそうです。
感想戦で▲2四歩~▲3五銀と右銀をぶつけていく指し方も検討され、こちらの方が良かった可能性があります。
木村八段は2筋での攻めを諦め、5筋に転戦しました。
懸案の右銀をぶつけたところで、羽生王位の指し手は△4五銀。駒の働きだけでいえば△6五銀と出る方が良く、羽生王位も「銀がソッポにいってしまうので変な気がした」と感想戦でおっしゃっています。
しかし、△6五銀は「私は攻めが単調かと思ってやめました(羽生王位)」とのことで、形だけにとらわれず読みを入れての判断だったことがうかがえます。
感想戦では△6五銀も難しいとされました。
前図の△4五銀が先手の角を追い、追われた角を切り飛ばし龍を作るという派手な展開です。
落ち着いてみると、後手が駒得で玉が堅いけれど、駒の働きは先手の方が良いです。
そこで働きの弱かった後手の飛車と桂馬を使う△9三桂が地味ながら好手段で、次に△5一飛とぶつけることができれば後手がはっきり良くなります。
歩の裏に香を打つのは上手い使い方です。余儀ない▲同銀に△同角がギリギリ詰めろになります。厳密にはこちらのほうが得ですが、龍の横利きを通すのでひと目後手玉が危険ですね。
実戦は▲7五同銀に△5五角と詰めろ龍取りをかけて、後手優勢です。
この後、龍を取った角が△4六角と詰めろで飛び出し、駒が存分に活躍する羽生王位の組み立てに感嘆するばかりです。
タイスコアになり、シリーズが盛り上がってきました。
ここ最近のタイトル戦は後手番の勝率がよく、本シリーズも後手番が勝っています。
次局は羽生王位の先手番です。おそらく木村八段が横歩取りに誘導することでしょう。羽生王位の対策が注目されます。
第57期王位戦七番勝負第3局
羽生善治(はぶ・よしはる)王位 対 木村一基(きむら・かずき)八段
2016年8月9・10日(火・水)
<扇松園>北海道旭川市高砂台3丁目8-3
立会:塚田泰明(つかだ・やすあき)九段
副立会:野月浩貴(のづき・ひろたか)七段
大盤聞き手:中井広恵(なかい・ひろえ)女流六段
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