6月8日(月)に第56期王位戦挑戦者決定戦が行われました。
決定戦に進出したのは、広瀬章人八段と菅井竜也六段です。
結果は144手で広瀬章人八段が勝ち、羽生善治王位への挑戦権を獲得しました。
では、挑戦者決定戦を振り返りましょう。
振り駒の結果、菅井六段の先手となりました。
升田流向かい飛車と呼ばれる形から、角を打ち込み合う乱戦へ。
「島ノート(著者:島朗九段)」で、やまびこ飛車という名前で紹介されていて、手順はここから▲5八飛△8四角成です。
実戦は▲6八銀△8四角成で、飛車は8筋で使うのが菅井六段の構想でした。
5筋の歩を取らせて美濃囲いへ向かう菅井六段。
振り飛車の戦いでは▲5五歩と突き捨て、底歩や▲5三歩のたたきを用意するのが常套手段ですから、早くても問題ないという判断でしょう。
対する広瀬八段は「歩のない筋の歩を伸ばす」と、こちらもセオリー通りの指し回し。
お互い、主張のぶつかり合いです。
乱戦から焦点の難しい戦いが続いています。
先手からは次に▲1五桂という攻め筋があるので、後手は何か手を入れるべき局面。
実戦は△3五馬と飛車に働きかけました。
代えて△1四歩と懐を広げながら桂打ちを消す手もあったそうです。
「馬は自陣に」という格言もありますが、すでに1枚引いてありますし、攻め駒が少ない現状ですので、6八に置いておくほうが良さそうです。
後手に誤算があったようで、先手が優勢になっている終盤戦。
直前の歩頭に打った△3五桂を「うっかりした」と、いう菅井六段。
相当怪しい雰囲気が漂っています。
王手に対して▲3七玉や▲1八玉では△4九龍が詰めろになるので、実戦は▲3九玉と引きました。
ところがソフトは、▲3七玉△4九龍以下、先手が良いといいます。
人間なら△4九龍で読みを打ち切ってしまいそうですから、ソフトならではの読み筋ですね。
上図の△3五桂に続き、△6六桂と二度目の桂打ち。
控え室では、「これ、勝ちに行ってるよ」という声が上がったそうです。
ソフトも早い段階からこの△6六桂を指摘しており、強い人には当然の一着のようです。
この後△4六銀の局面で広瀬八段は、「勝ちだと思った」と、感想を残しています。
「一時は敗戦を覚悟するぐらい劣勢の局面があったとは思いますが」と、広瀬八段はFacebookに本局の感想を書かれています。
この勝利で第52期以来の王位戦七番勝負に登場です。
フルセットの末、失冠した時の相手は、他ならぬ羽生善治現王位。
取り返す、絶好のチャンスとなりました。
七番勝負の日程と対局場はこちらにまとめました。
【第56期王位戦七番勝負開幕】 (オンライン将棋教室 香 Facebookページ)