里見香奈倉敷藤花に伊藤沙恵女流二段が挑戦していた第25期倉敷藤花戦三番勝負。第2局は121手で里見倉敷藤花の勝ちとなりました。
シリーズ成績を2連勝とし、倉敷藤花防衛です。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は里見倉敷藤花の先手番です。
本局はお互いに角道を開けあった後、3手目から▲9六歩△1四歩▲1六歩△9四歩と両方の端歩を突き合う形になりました。伊藤女流二段は△3三角から△2二飛と向かい飛車を選び、対する里見倉敷藤花は▲6八玉と居飛車にしました。
図の一手前で▲3六歩~▲3七銀~飛車を振るという手順で相振り飛車にするのもよく指されている手順です。
局後のインタビューによると伊藤女流二段は「里見さんの居飛車で私が振り飛車という初めての戦型だったので、新鮮な気持ちで指していました」と答えています。
図は▲8六歩△7四歩と進んだところ。何気ない進行ですが、この2手は後手に利がありました。先手は▲8六角と活用する手段を消してしまい、後手は実戦のように△5一角~△7三角の転換ができてしまったからです。
里見倉敷藤花が局面をやや苦しいと見て、桂損で角をさばく手段に出ました。しかし、現局面は先手の駒の働きが悪く、事態は好転していません。
局後のインタビューによると伊藤女流二段は「まずまず指せていると思っていた」とのことですが、「△2九角~△3六桂があんまり筋の良い手ではないので」とのことで、この辺りはひとつのポイントだったようです。
△2九角に代えて、控室では△3一桂(▲2四成銀なら△2二飛)が指摘されていたそうです。
「自信がなかった」という里見倉敷藤花は▲8五歩と玉頭に手をつけます。この手に菅井竜也王位は驚かれていて、感想戦でも印象に残る手と評されていました。
△8五同歩なら▲8四歩△同銀▲3二歩成△同金▲5一角という狙いで、銀冠崩しで部分的に出てくる筋です。
この場合は4二の飛車にヒモがついているため純粋な両取りではありませんが、伊藤女流二段は飛車を渡した後に自信のない局面があったため、歩を取りませんでした。
玉頭に位が取れたので、里見倉敷藤花が指しやすくなりました。
その終盤戦。駒の損得は▲金桂△角で先手の駒得ですが、働きの弱い駒が目立ちます。ゆえに6八に眠っていた飛車を▲5八飛とぶつけるのが好手段。遊び駒を活用するのは基本ですね。
飛車交換は避けづらく、そうなると玉形の差がクローズアップされてくるので、先手の方針が分かりやすくなります。
最後は2三の成銀が詰みに働き、「勝ち将棋鬼のごとし」となりました。
女流王座戦と並行した防衛戦で、日程的には厳しい中で結果を残された里見女流五冠。
「1局目・2局目通してどちらもミスをしてしまったけれど、対局中の心理面は割と安定していて……」と、局後のインタビューで語られており、今後の活躍も期待ですね。
里見香奈女流五冠、倉敷藤花防衛おめでとうございます!