郷田真隆九段(王将)と山崎隆之八段が争う第1期叡王戦決勝三番勝負。
第2局は126手で山崎八段の勝ちとなりました。
では、第2局を振り返りましょう。
第2局は郷田九段の先手番です。
初手▲7六歩から横歩取りに進みました。
最近の横歩取りは△2四飛とぶつける手法が現れ、さらに後手の攻め筋が広がっています。その△2四飛をやりはじめたのが、他ならぬ山崎八段を記憶しています。
そして、次の一手も山崎八段らしい斬新な一手で、△8二飛。
よくある飛車の引き場所は△8五飛で、3五の歩を狙う手です。
△8二飛に対して▲8七歩と受けてくれれば、そこで△8五飛と一人時間差で取りに行くという寸法です。
△8二飛に対して、先手の郷田九段も受けずにつっぱりました。
そうなると、△8六歩と手筋の教科書に出て来そうな垂れ歩が飛んできます。
もちろん、織り込み済みで、▲8四歩と「大駒は近づけて受けよ」の格言から▲6六角と、危機を脱します。
この辺りの歩の使い方はとても参考になり、見ごたえがあります。
局面は進み、中盤の難所。
先手は角金交換の駒損なので、アマチュア的にはすぐに▲5四金と取ってしまいたくなります。実際にはそれでも良かったようで、△同歩に▲5三桂成が次の一手のような捨て駒。これで難解ながら攻めが続きます。
実戦は▲7五歩でした。
飛車の横利きを通しつつ歩を攻めに参加させる一手で、指したのが郷田九段となれば、格調高い一手と言われることでしょう。
次の△9四歩もなかなか予想しづらい手で、この2手の応酬をピッタリ予想できた方は実力プロ級といえそうですね。
この辺りの局面では、一手指すごとにソフトの評価値が乱高下し、ニコニコ生放送の会場ではどよめきが起こっていました。
▲8四桂に対して、△7一玉なら後手良しというのがソフトの評価でしたが、実戦は△8二玉で一気に先手良しに振れました。
どちらの変化も深く広く、プロでも1分将棋では読み切れるものではなかったようです。
感想戦ではこの局面である手が示され、郷田九段はその手を聞いた瞬間は「それはなんですか?」と、聞き返すほど。しばらくして山崎八段が気が付き、「ひどい」と繰り返していました。
それほど人間には見えづらい筋。それは▲7三金で先手勝ち筋というものです。
△同金の一手に▲8三歩が継続手で、対して(1)△同金は▲7一角以下詰み、(2)同玉なら▲6五角が王手龍取りで先手良し。
ゆえに、図の△8七飛成は悪手だったことになるのです。
7四の金は後手玉の上部脱出を抑える要の駒だったので、ここでそれを捨てる発想はかなり思いつきづらいものです。
流れで考える人間、局面と点でとらえるソフトの違いがくっきり表れた図でした。
連勝で初代叡王に輝いた山崎八段。
久しぶりの棋戦優勝です。
NHKでも将棋フォーカスMCとしてお茶の間でも有名ですが、これでさらに名をあげました。
今後は電王戦の番勝負が控えており、こちらも楽しみですね。
山崎八段、叡王戦優勝おめでとうございます!