羽生善治王位に木村一基八段が挑戦している第57期王位戦七番勝負。
第1局は98手で木村八段の勝ちとなりました。
では、第1局を振り返りましょう。
振り駒の結果、先手は羽生王位に決まりました。
木村八段の2手目が△8四歩だったので、矢倉か角換わりに進むかと思われましたが、横歩取りに落ち着きました。
序盤の4手を見るだけでも、木村八段は角換わりの後手番は持ちたくないけれど、矢倉と横歩取りなら持ってもいいことがわかります。
図の▲1六歩はやや珍しいタイミングで、よくある進行は▲3八金△1四歩▲4八銀△1五歩です。
1筋の位が取れない後手は、△7四歩~△7三桂と活用しました。この構想は今期王位戦挑戦者決定戦の▲木村△豊島戦でも出ており、その逆を持つ木村八段の心境はいかに。
図の△8六歩が鋭い狙いを秘めた手で、実戦の▲同歩には△8八角成から飛車を振り回して、後手好調です。
ですので、先に▲4四飛と切ってから▲8六歩と戻すほうが良かったと感想戦では結論付けられたようです。
横歩取りらしいあちこちで駒の当たる中盤戦。
次に▲3五飛と回られると困るため、木村八段は△4四銀と打って受けました。
ここで▲6五飛と逃げる手もあったそうですが、羽生王位は決断良くスパッと▲4四同飛。斬り合いに行きます。
飛車交換は一般的に玉の堅いほうが有利とされ、この場合は金銀3枚の後手のほうが条件が良いです。
手番を握った先手に有効な手があるかが焦点となります。
▲2一飛と敵陣深く飛車を下して攻めに行く羽生王位。そこで受け師の異名を持つ木村八段が放った手は△1二角でした。
通常の中住まいと比べて金銀が逆なので▲6一角の筋がなく、飛車取りに当てておけば▲4一銀(角)の筋も△6一玉でしのげています。
また、△1二角は△6七角成を見ているところも見逃せません。
△1二角と受けて、△6七角成と王手で攻めて、さらに△2二銀と受けて、複雑な手順で後手優勢の局面になりました。
感想戦で羽生王位は「▲4一角や▲4一銀では寄らないんですよね」と、おっしゃっており、前述の通り飛車当たりにしておけば△6一玉で寄りません。
ちなみにソフトにも時間をかけて検討させてみましたが、明快な寄り筋は示しませんでした。
仕方のない▲9一龍に、△8一歩としっかり底歩を打って、後手陣は相当寄らない形になりました。木村八段らしい組み立てです。
木村八段は持ち味を存分に発揮した印象のある将棋で幸先の良いスタートを切りました。
対する羽生王位は横歩取りの先手番に苦労している印象で、最近は負けが込んでいます。
次局は木村八段が先手番ですので、羽生王位の作戦選択が注目です。
戦型は、羽生王位が逆を持ってやってみる横歩取りも見ていて面白そうですが、矢倉か角換わりに落ち着くような気がします。
第57期王位戦七番勝負第2局
羽生善治(はぶ・よしはる)王位 対 木村一基(きむら・かずき)八段
2016年7月27・28日(水・木)
<中の坊瑞苑>兵庫県神戸市北区有馬町808
立会:脇謙二(わき・けんじ)八段
副立会:畠山鎮(はたけやま・まもる)七段
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