渡辺明竜王に丸山忠久九段が挑戦している第29期竜王戦七番勝負。
第6局は90手で丸山九段の勝ちとなりました。
シリーズ成績を3勝3敗とし、決着は最終局へ持ち越されました。
では、第6局を振り返りましょう。
第6局は渡辺竜王の先手番です。
カド番の丸山九段は、迷うことなく4手目は△8八角成でした。得意の一手損角換わりを目指します。今期七番勝負でも連採しており、後手番ながらさらに一手損しているのにもかかわらず攻める形を作ることができています。相居飛車では後手は守勢に立たされることが多いので、今後流行するかもしれませんね。
一手損角換わりに対する先手の対抗策としていろいろありますが、本局の渡辺竜王は腰掛け銀にしました。そもそも一手損角換わりが出てきた理由としては、先手の腰掛け銀に対して△8五桂を用意することでした。攻め筋としては△9五歩や△7五歩があります。渡辺竜王はその筋は大丈夫と踏んでこの形に組んでいるのでしょう。ところが、丸山九段の仕掛けは△6五歩からでした。
前図から▲6五同歩△同銀▲同銀△同桂とシンプルな手順に進みました。
渡辺竜王は最後の△同桂を軽視していたそうで、攻められる展開となり先手番としては不満のある進行となりました。
後手は桂損ながら△3九角の筋があり取り返しの利く形です。
受けていてもキリがないと判断した先手は▲2四桂と攻め合いを目指しました。これに対して△6六歩と銀を取ったのが好判断。▲3二桂成で後手玉は薄くなりますが、駒損を回復し後手だけ攻めが分かりやすい形になるので後手優勢となりました。
△3九角も入り後手の攻めが好調です。
△6七銀の打ち込みに▲6八歩と受けた局面。ここで△7八銀成と金の方を取ったのが寄せを見据えた好手段です。玉の側の金をはがすのは寄せの基本ですね。駒の損得だけでいうと図から△5八銀成ですが、金が残っているので先手玉もまだまだ頑張れます。
丸山九段は△7八銀成以下、△6七金~△6九銀と捨て駒連発で寄せ形を築いていきます。
局面は後手優勢の終盤戦。
△7八金と打った局面で、控室が騒然としたそうです。と、いうのは、後手玉は▲3二角△5一玉▲7三角成の時に、金の合駒をしないと詰んでしまうから。実戦は▲7三角成に△6二龍と代用して、後手が残していたようです。
感想戦で深浦九段に「予定だったんですか」と聞かれた丸山九段は「あんまり予定じゃなかった。金を打ったほうが手厚いと思ったが、手厚くなかったですね」と苦笑されていたそうです。
丸山九段が勝ち、3勝3敗となりました。第21期以来のフルセットです。
渡辺竜王が勝てば、通算11期目の竜王位獲得。
丸山九段が勝てば、初の竜王位となります。
最終局も手に汗握る熱戦に期待しましょう。
第29期竜王戦七番勝負第7局
渡辺明(わたなべ・あきら)竜王 対 丸山忠久(まるやま・ただひさ)九段
2016年12月21・22日(水・木)
<温泉御宿 龍言>新潟県南魚沼市坂戸山際79
立会:森下卓(もりした・たく)九段
解説:佐藤紳哉(さとう・しんや)七段
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第29期竜王戦 七番勝負 第7局初日 渡辺明竜王 vs 丸山忠久九段
解説:永瀬拓矢(ながせ・たくや)六段
聞き手:安食総子(あじき・ふさこ)女流初段
第29期竜王戦 七番勝負 第7局2日目 渡辺明竜王 vs 丸山忠久九段
解説:中村修(なかむら・おさむ)九段
聞き手:藤田綾(ふじた・あや)女流二段